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「独創的シーズ展開事業 独創モデル化」
平成20年度採択課題 事後評価報告書

平成22年2月
独立行政法人科学技術振興機構

6.評価対象課題の個別評価

手術中蛍光眼底造影装置の実現に向けた眼内照明用石英ファイバプローブ製造技術の確立

企業名 西日本電線株式会社
研究者(研究機関名) 井上 高教(大分大学工学部応用化学科 准教授) 他

1)独創モデル化の概要及び成果

 糖尿病網膜症等の眼底疾患の診断に蛍光造影剤(フルオレセインおよびインドシアニングリーン)を用いた蛍光眼底造影は大変有効な手段であるが、従来の造影法は手術中に実施することが出来ないため、術前に撮影された画像をもとに手術が行われている。
 研究者らは、眼球内に挿入した石英ファイバプローブから特定波長のレーザ光を照射することにより手術中の蛍光眼底造影を可能とし、手術の高精度化(治癒率の向上)や時間短縮を図ることを目的として研究を進めて来た。
 モデル化では、プローブ先端の最適化と加工装置の開発等を行い、10本のプローブ試作品を完成させた。さらにサルを用いた実験により、その評価を実施した。結果として、フルオレセイン蛍光眼底造影(青色光)では実用可能なレベルの造影が可能なことが確認され、インドシアニングリーン蛍光眼底造影(赤外光)では画像の鮮明度向上の必要性が明かになった。
 本成果は、既存の医療機器では出来なかった手術中の蛍光眼底造影が実現可能であることを示すものである。

2)事後評価

(ア)モデル化目標の達成度
照度の均一性と画像の解像度に改良の余地があるが、当初の目標はほぼ達成されている。しかし、プローブの先端形状の最適化に関しては未確定の要素が残されている。

(イ)知的財産権等の発生
2件の特許出願が予定されている。

(ウ)企業化開発の可能性
石英ファイバープローブの製造技術はほぼ確立できたが、プローブの最適形状に関しては未確定の部分があり、光学的な検討が必要である。また、医療機器として企業化するためには安全性や信頼性の付与が大きな課題となる。

(エ)新産業及び新事業創出の期待度
国民生活の面からは社会的意義は大きいが、ここで開発された技術そのものが新産業を生み出す可能性は高くない。

3)評価のまとめ

 本課題は「独創モデル化」という観点からはほぼ計画通り達成されているが、これを将来医療機器として確立するためには、なお幾つかのハードルを越える必要がある。しかし、企業化の可能性はきわめて高いと考える。


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