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「独創的シーズ展開事業 独創モデル化」
平成20年度採択課題 事後評価報告書

平成22年2月
独立行政法人科学技術振興機構

6.評価対象課題の個別評価

表面・界面の磁気構造分析を可能にするスピン偏極イオン散乱分光装置の開発

企業名 株式会社オメガトロン
研究者(研究機関名) 鈴木 拓(独立行政法人物質・材料研究機構量子ビームセンター 主任研究員)

1)独創モデル化の概要及び成果

 近年、シリコン素子やメモリー等の集積度が飛躍的に増大し、限られた基板表面に素子を組み込むことが要求される。そのため、単原子層レベルの超薄膜成膜技術が必要であり、最表面2〜3原子層の構造分析が求められている。とりわけ、スピン素子の開発やその特性向上の為には、素子の表面・界面の磁気構造の分析は不可欠である。従来、原子炉やシンクロトロンなどの巨大設備を使用していたが、表面・界面の分析には対応しておらず、最表面の元素と原子層を選別し、スピン解析を含めた磁気構造解析は不可能であった。
 上記課題を解決する手法として(独)物質・材料研究機構で開発されたコンセプト、即ち、偏極ヘリウムイオンビームを試料表面に入射し、散乱イオンのエネルギ−分析を行う方法を用いて、表面・界面の磁気構造分析を、手軽で迅速に行うことを可能にした。この装置の製品化により、コンピュータの超高速化や磁気記憶の大容量化のみならず、表面科学反応や触媒反応の研究分野への貢献が見込める。

2)事後評価

(ア)モデル化目標の達成度
機器を構成する要素技術の性能は達成されているが、レーザ光学系や波長調整、ノイズレベルの低減など調整すべき点がいくつか残っており、また、実サンプルでのデータは未取得であるため総合的な達成率は70%程度と考えられる。

(イ)知的財産権等の発生
現在までのところ知財権の発生はない。今後、関連機器を含め商品化する段階になれば発生することが期待される。

(ウ)企業化開発の可能性
実サンプルのデータを取得し、目標仕様を十分達成したデータを示すことができれば、産業界から使ってみたいという声も出てきて、企業化できる可能性があると考えられる。

(エ)新産業及び新事業創出の期待度
次世代半導体などに必要とされる材料開発の、有力なツールとなることが期待され、波及効果はあると考えられる。ただし、商品化のためには装置のコストを低減する必要があり、大きな努力が求められるであろう。

3)評価のまとめ

 (独)物質・材料研究機構のコンセプトを実用的な製品の形にする開発で、各部構成はよく検討した設計・製作となっており、評価出来る。まだ解決すべき課題がいくつか残されており、実サンプルのデータが未取得で、システムとしての完成にはあと一歩の開発が必要であるが、今後の努力によって、エレクトロニクスの基礎技術的研究に貢献する強力な製品の完成が期待される。


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