さきがけ 研究者

研究課題名

スピン流を用いた革新的エネルギーデバイス技術の創出

プロフィール

内田 健一
内田 健一
Ken-ichi Uchida

1986年 神奈川県相模原市生まれ。2008年 慶應義塾大学理工学部物理情報工学科 卒業。2009年 慶應義塾大学大学院理工学研究科基礎理工学専攻 修士課程修了。2012年 東北大学大学院理学研究科物理学専攻 博士課程修了、博士(理学)。同年 東北大学金属材料研究所 助教。2014年 同准教授、2016年 物質・材料研究機構 磁性・スピントロニクス材料研究拠点スピンエネルギーグループ グループリーダー、現在に至る。
研究分野:スピントロニクス
趣味:日本酒

  • ※プロフィールは、終了時点のものです。

研究内容紹介

身の回りにありふれた環境エネルギーを利用した新しいデバイス駆動原理の創出は、持続可能な社会に向けた取り組みが活性化している現代科学技術における最重要課題の一つとなっています。近年、地産地消のエネルギー社会を実現するための候補技術として、熱電効果や圧電効果を用いた発電技術が盛んに研究されていますが、その応用範囲は制限されているのが現状です。
 一方で、電子が有する電荷の自由度に加えてスピン角運動量の自由度も積極的に利用する新しい電子技術「スピントロニクス」が注目を集めています。従来のエレクトロニクスが電流の制御に基づいて体系化されたように、スピントロニクス技術の発展にはスピン流(スピン角運動量の流れ)の生成・検出・制御技術の拡充が必要不可欠です。私たちはこれまでの研究により、熱流によるスピン流生成現象「スピンゼーベック効果」(図(a)∗1)や音波によるスピン流生成現象「音響スピンポンプ効果」の世界初の観測に成功しており、これらの現象を用いることで従来はエネルギー源となり得なかった絶縁体からもスピン流や電流を生成可能であることを実証しています。
 本研究では、社会に広く存在する莫大な量の未利用エネルギーを回収利用するための新しい切り口として、スピン流に基づく発電・省エネデバイス技術の創出に挑戦します。これを可能にするのが、スピンゼーベック効果や音響スピンポンプ効果に関する研究によって明らかになった新しいエネルギー変換原理「スピン有効温度エンジニアリング」です(図(b)∗2)。本研究課題では、この原理に基づき ①表面プラズモン-素励起間相互作用を基盤とした新奇スピン流生成現象の観測、②物質依存性測定と表面・界面処理によるスピン流生成効率の最適化、③ハイブリット発電のための界面デバイス構造の開発を重点的に行います。未利用環境エネルギーからの分散型発電やスピンデバイス駆動を将来のアプリケーションとして設定し、この実現を目指して、物理原理・材料・素子構造・作製プロセスを総合的に開発していきます。

∗1: 図(a) スピンゼーベック効果の模式図。
∗2: 図(b) 本研究で開拓するスピン流-エネルギー変換の概念図。
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