さきがけ 研究者

研究課題名

自己組織化を活用した超ナノ結晶人工光合成デバイスの構築

プロフィール

小林 厚志
小林 厚志
Atsushi Kobayashi

1978年長野県生まれ。2006年 九州大学大学院理学府凝縮系科学専攻 博士後期課程修了、博士(理学)。2006年 九州大学大学院理学研究院 特任助手。2006年12月~2007年3月 シドニー大学化学科 客員研究員。2007年 北海道大学大学院理学研究院化学部門 助教。2013年 北海道大学大学院理学研究院化学部門 講師、2014年 同准教授、現在に至る。
研究分野:固体物性化学、錯体化学、光化学
趣味:長距離ドライブ、料理、読書

  • ※プロフィールは、終了時点のものです。

研究内容紹介

現代の地球温暖化問題やエネルギー問題を解決しつつ、社会を持続的に発展させるためには、再生可能エネルギーを高効率かつ簡便に利用可能な二次エネルギーへと変換するシステムが必要不可欠です。太陽光エネルギーは半永久的な利用が可能であり、最も有望なエネルギー源ですが、エネルギー密度が低いため、効率的に光を捕集し、電気や燃料などの二次エネルギーに変換するシステムが求められます。この太陽光を二次エネルギーに変換する理想的なシステムが植物の「光合成」であり、希薄な太陽光を効率的に捕集する光アンテナ、水を分解し水素イオンと電子を取り出す酸化触媒、取り出した電子と水素イオンを活用して二酸化炭素からエネルギー源となる糖を創りだす還元触媒、の3つを非常に合理的に組み上げ、ひとつの大きな光触媒として機能しています。しかし、これまでに植物の光合成に匹敵する光-化学エネルギー変換システム、いわゆる「人工光合成」を実用化できるレベルで構築できた例はありません。
 本研究プロジェクトでは、人工光合成に必要不可欠な3要素、「光捕集」、「酸化触媒能」、「還元触媒能」を高性能化するだけではなく、それらを如何に合理的かつ低コストプロセスで統合していくか?に研究の焦点を絞り、植物の光合成を見習いながら、分子本来が有する自己組織化能を活用したボトムアップ手法により、太陽光と水からエネルギー資源を創りだす「人工光合成デバイス」を組み上げることに挑戦します。具体的には、光励起により電子-正孔対を創りだす光増感分子をナノサイズの多孔質結晶へと集積し、その多孔質チャンネル内部に水の酸化または還元触媒分子を組み込みながら、ナノ結晶表面にカウンターキャリヤーを蓄積可能な分子を固定化することで、光によりナノ結晶外部と内部で電子と正孔を分離しながら水の分解反応を駆動できる、ナノ結晶型光触媒の構築を行います。さらに、ナノ結晶表面に固定化した分子の自己組織化能を活用して、電子と水素イオンが移動可能なチャンネルを形成しながら、2つのナノ結晶型光触媒を最適構造へと導き、「超ナノ結晶型人工光合成デバイス」の創出を目指します。

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