さきがけ 研究者

研究課題名

固液界面その場XPS測定による酸素還元反応機構の解明

プロフィール

増田 卓也
増田 卓也
Takuya Masuda

1978年 北海道生まれ。2006年 北海道大学大学院 博士課程修了、博士(理学)。2006年 アリゾナ州立大学 博士研究員。2007年 北海道大学大学院 特任助教。2010年 物質・材料研究機構 特別研究員、2013年 科学技術振興機構 さきがけ研究者、2014年 物質・材料研究機構 先端的共通技術部門 主任研究員、現在に至る。
研究分野:電気化学、表面科学
趣味:カレー、ラーメン(味噌)、ビール

  • ※プロフィールは、終了時点のものです。

研究内容紹介

エネルギー分散型社会の構築を目指して、二次電池、燃料電池、色素増感太陽電池、光触媒など多様なエネルギー変換システムの必要性が認識され、効率と安定性向上の両面から研究・開発が展開されています。これらに資する触媒や電極材料開発の多くは、主に性能評価から得られた経験的な知見に基づいて網羅的に進められているのが現状ですが、反応や劣化のしくみを理解することができれば、既存の材料の問題点が顕在化し、より合理的に材料設計を推進することができるものと期待されます。これらのエネルギー変換プロセスは、固体と液体の接する界面(固液界面)で起こります。このため、反応のリアルな描像に迫るためには実動作環境(すなわち、反応が起こっているその場)で計測を行い、界面からの生きた情報を得ることが必要不可欠です。
 X線光電子分光法(XPS)は、X線を照射することにより物質表面に存在する元素を励起し、光電効果によって放出する光電子の運動エネルギーと強度分布を分析することで、表面組成と表面種の化学状態を非破壊的に、かつ再現性よく評価することができる強力な手法です。しかし、X線照射によって生成した光電子は、媒質中における非弾性散乱や弾性散乱によって容易にエネルギーを失ったり方向を変えて減衰してしまうため、従来のXPS測定は真空中で行う必要があり、実動作環境における触媒や電解質溶液と接触した電極材料について、表面状態をその場で観察することは不可能でした。
 この研究プロジェクトでは、大型放射光施設SPring-8のシンクロトロン放射光を光源とした高エネルギーX線と光電子を効率よく透過する軽元素の超薄膜窓を利用した革新的な測定システムを開発し、これまで活躍の場が真空中のみに限られていたXPSを世界で初めて、固液界面におけるエネルギー変換プロセスのその場観察に応用し、高性能な電解質・触媒・電極材料を設計するための指針の獲得を目指します。

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