【コンセプト実現のための課題】
従来の点火技術だと着火しにくい。大きな放電エネルギーを与えて部分的に着火させても、火炎が伝播するときと消炎し伝播しないときの変動が大きく、燃焼が安定しない。
【実施内容と成果】
超希薄燃焼場に強力なタンブル流(縦渦)を導入した、高乱流・希薄燃焼の現象を解明。その結果に基づき、安定着火を可能とする点火技術を開発。これにより、エネルギー損失の低い低温燃焼となる超希薄燃焼を実現し、熱効率向上の実証に成功。
【コンセプト実現のための課題】
エンジン燃焼室の壁近くでの火炎の滞留や後燃えによって、エネルギー損失(冷却損失)が生じたり燃焼エネルギーの仕事への変換効率が低くなったりする。
【実施内容と成果】
燃料噴霧の発達や燃料濃度の分布に関する詳細な解析と実験により、燃料噴射の在り方と火炎形成の関係を解明。また、後燃えの要因を特定。その結果に基づき、燃料噴霧が空気を巻き込みながら最適に分散する、燃料噴射技術を開発。これにより、火炎が壁から離れて配置され、かつ後燃えを低減する高速空間燃焼を実現し、熱効率向上の実証に成功。
【研究開発概要】
固体潤滑剤と軟質金属から構成される高耐久の低摩擦層およびその表面改質技術の開発などにより、エンジンの摺動表面に低摩擦機能を付与し、機械摩擦損失の55.5%低減を実証。
【研究開発概要】
流体解析に基づき翼列、流路を新たに設計するとともに、伝熱と軸受での摩擦を考慮したターボ過給機システムを構築。市販ターボ過給の効率を10ポイント以上上回る、最大69%程度の効率値を実証。
【研究開発概要】
発電温度域を中低温に拡大できる、新たな素子およびモジュールを開発。排気熱との熱交換システムを含めて、最大1.3%程度の熱効率相当の性能があることを実証。
本プロジェクトでは、先進的な流動・燃焼場を高精度に解析できる、科学的にも実用的にも優れた燃焼解析ソフトウェア「HINOCA(火神)」を開発しました。HINOCAには、複雑な流動、超希薄燃焼、またPM(粒子状物質)生成等の現象を物理および化学に基づき捉えモデル化したRYUCA(粒神)などの本プロジェクトによる最先端の知見が導入されています。
また、格子生成が不要な計算手法を取り入れており、計算の前処理に要する時間を大幅に削減することができます。さらに、燃焼過程における現象ごとにサブモデルが構築され、それらを入れ替えることによって、様々な燃焼に対応可能です。このように、産学双方に魅力的であるとともに、SIP終了後も最新の知見を入れ込んで成長できるソフトウェアとなるように設計されました。
インジェクターから噴射された燃料噴霧を表現する。燃料噴霧を液滴の集まりで近似し、気相から受ける抗力、液滴蒸発、液滴分裂、壁面付着、反射などの現象が考慮されており、燃料噴射後の混合気形成、壁面液膜形成を再現することができる。また、ピストン面に付着した燃料液膜が蒸発し、化学反応によりススが形成される過程を再現することができる。
点火時にスパークプラグから放出される放電を表現する。放電経路を連なった粒子群として表現し、スパークプラグの電気回路をモデル化することにより、放電経路が長くなると放電が一旦消え、再放電が起こる様子を再現することができる。さらに、火炎核成長が考慮され、火炎伝播にいたる過程を再現することができる。
点火後の火炎伝播を表現する。化学方程式を解くのではなく、火炎の流体に対する移動速度をモデル化し、火炎面の移動を追従することにより、小さい計算負荷で火炎伝播の表現が可能である。さらにチーム間連携により、火炎面のフラクタル性をモデルに取り入れることにより更なる高精度化を見込んでいる。
シリンダー壁面から外に逃げていく熱量を表現する。従来考慮されていなかった壁面接線方向の流れの勾配の影響や圧縮性の効果をモデルに取り入れることで、複雑なエンジン内部流れの影響を考慮した冷却損失の分布を再現することができる。
ノックと呼ばれる、エンジン内で自着火が起こることにより発生する大きな圧力振動を表現する。新しく開発したガソリン燃焼用の化学反応モデルによって得られた着火遅れ時間から自着火発生の指標を計算し、ノック発生の有無を再現している。
※詳しくは「SIP革新的燃焼技術成果集」をご覧ください