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研究成果
『SIP革新的燃焼技術成果集』

5年間の成果をまとめた1冊です

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成果公表リスト

熱効率50%超の達成▶JSTプレスリリース(2019.1.16)

産学連携の体制構築と運営の成功により、以下のような研究成果を統合することによって、ガソリンエンジンでは51.5%、ディーゼルエンジンでは50.1%の正味最大熱効率を達成しました。 熱効率50%超の達成

1.ガソリン燃焼の高効率化に関する研究開発

燃焼コンセプト:「超希薄燃焼(スーパーリーンバーン)」

【コンセプト実現のための課題】
従来の点火技術だと着火しにくい。大きな放電エネルギーを与えて部分的に着火させても、火炎が伝播するときと消炎し伝播しないときの変動が大きく、燃焼が安定しない。
【実施内容と成果】
超希薄燃焼場に強力なタンブル流(縦渦)を導入した、高乱流・希薄燃焼の現象を解明。その結果に基づき、安定着火を可能とする点火技術を開発。これにより、エネルギー損失の低い低温燃焼となる超希薄燃焼を実現し、熱効率向上の実証に成功。

2.ディーゼル燃焼の高効率化に関する研究開発

燃焼コンセプト:「高速空間燃焼」

【コンセプト実現のための課題】
エンジン燃焼室の壁近くでの火炎の滞留や後燃えによって、エネルギー損失(冷却損失)が生じたり燃焼エネルギーの仕事への変換効率が低くなったりする。
【実施内容と成果】
燃料噴霧の発達や燃料濃度の分布に関する詳細な解析と実験により、燃料噴射の在り方と火炎形成の関係を解明。また、後燃えの要因を特定。その結果に基づき、燃料噴霧が空気を巻き込みながら最適に分散する、燃料噴射技術を開発。これにより、火炎が壁から離れて配置され、かつ後燃えを低減する高速空間燃焼を実現し、熱効率向上の実証に成功。

3.損失低減に関する研究(ガソリン燃焼とディーゼル燃焼の両方に共通)

3-1.機械摩擦損失の低減に関する研究

【研究開発概要】
固体潤滑剤と軟質金属から構成される高耐久の低摩擦層およびその表面改質技術の開発などにより、エンジンの摺動表面に低摩擦機能を付与し、機械摩擦損失の55.5%低減を実証。

3-2.排気エネルギー有効利用に関する研究(ターボ過給の高効率化)

【研究開発概要】
流体解析に基づき翼列、流路を新たに設計するとともに、伝熱と軸受での摩擦を考慮したターボ過給機システムを構築。市販ターボ過給の効率を10ポイント以上上回る、最大69%程度の効率値を実証。

3-3.排気エネルギー有効利用に関する研究(熱電変換システムの高効率化)

【研究開発概要】
発電温度域を中低温に拡大できる、新たな素子およびモジュールを開発。排気熱との熱交換システムを含めて、最大1.3%程度の熱効率相当の性能があることを実証。

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3次元エンジン燃焼解析ソフトフェア「HINOCA」

本プロジェクトでは、先進的な流動・燃焼場を高精度に解析できる、科学的にも実用的にも優れた燃焼解析ソフトウェア「HINOCA(火神)」を開発しました。HINOCAには、複雑な流動、超希薄燃焼、またPM(粒子状物質)生成等の現象を物理および化学に基づき捉えモデル化したRYUCA(粒神)などの本プロジェクトによる最先端の知見が導入されています。
また、格子生成が不要な計算手法を取り入れており、計算の前処理に要する時間を大幅に削減することができます。さらに、燃焼過程における現象ごとにサブモデルが構築され、それらを入れ替えることによって、様々な燃焼に対応可能です。このように、産学双方に魅力的であるとともに、SIP終了後も最新の知見を入れ込んで成長できるソフトウェアとなるように設計されました。

【HINOCAの構成】

  • 【噴霧・液膜・PM形成】

    インジェクターから噴射された燃料噴霧を表現する。燃料噴霧を液滴の集まりで近似し、気相から受ける抗力、液滴蒸発、液滴分裂、壁面付着、反射などの現象が考慮されており、燃料噴射後の混合気形成、壁面液膜形成を再現することができる。また、ピストン面に付着した燃料液膜が蒸発し、化学反応によりススが形成される過程を再現することができる。

  • 【点火】

    点火時にスパークプラグから放出される放電を表現する。放電経路を連なった粒子群として表現し、スパークプラグの電気回路をモデル化することにより、放電経路が長くなると放電が一旦消え、再放電が起こる様子を再現することができる。さらに、火炎核成長が考慮され、火炎伝播にいたる過程を再現することができる。

  • 【火炎伝播】

    点火後の火炎伝播を表現する。化学方程式を解くのではなく、火炎の流体に対する移動速度をモデル化し、火炎面の移動を追従することにより、小さい計算負荷で火炎伝播の表現が可能である。さらにチーム間連携により、火炎面のフラクタル性をモデルに取り入れることにより更なる高精度化を見込んでいる。

  • 【壁面冷損】

    シリンダー壁面から外に逃げていく熱量を表現する。従来考慮されていなかった壁面接線方向の流れの勾配の影響や圧縮性の効果をモデルに取り入れることで、複雑なエンジン内部流れの影響を考慮した冷却損失の分布を再現することができる。

  • 【ノック】

    ノックと呼ばれる、エンジン内で自着火が起こることにより発生する大きな圧力振動を表現する。新しく開発したガソリン燃焼用の化学反応モデルによって得られた着火遅れ時間から自着火発生の指標を計算し、ノック発生の有無を再現している。

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主な研究成果一覧

※詳しくは「SIP革新的燃焼技術成果集」をご覧ください

    • 超希薄(スーパーリーン)条件下でも安定着火、高速燃焼、ノック抑制を可能とする
      各種要素技術を構築し、正味熱効率50%を達成
    • 最先端の計測手法と数値計算により放電路挙動および点火特性を明らかにし、超希薄高流動混合気に適用可能な点火モデルを構築した。
    • HINOCA:超希薄・高流動場における火花点火挙動の予測を可能とした。
    • スーパーリーンバーンの火炎伝播メカニズム解明と流動最適化による燃焼促進により、新たな燃焼モデルの構築とエンジン熱効率向上を実現。
    • HINOCA:サブグリッドスケール (SGS) 燃焼モデルを構築し、ガソリンエンジンでの計算を可能とした。
    • エンジン内壁面速度境界層構造を明らかにするとともに、冷却損失低減・ノック抑制技術を開発し、共用エンジンに適用することでグロス図示熱効率50.1%を達成した。
    • HINOCAにおける熱伝達解析を高精度化した。
    • ノッキングと (1)燃料/燃焼特性/化学反応との関係・(2)圧縮性流体力学との関係を解明することによりノッキング抑制手法を提案
    • ガソリンサロゲート反応機構:将来の再現性を担保した試験研究用ガソリンの提案と半定量的予測性を有する反応機構の構築
    • リーンバーン時の燃焼変動低減と熱効率最適化制御
    • 高等容度と低冷却損失を両立する高速・低冷却損失燃焼技術を構築し、損失低減技術とともに正味熱効率50%を達成
    • 柔軟な噴射制御により高効率・低騒音の燃焼パターンを作成
    • 後燃え現象は噴霧先端過濃混合気が主因であることを解明し、噴霧軸方向燃料濃度分布を均一化する逆デルタ噴射率コンセプトを構築
    • 冷却損失に対する制御因子・物理量の影響を明らかにし、高分散・高エントレインにより低冷却損失燃焼を可能とするコンパクト噴霧火炎のコンセプトを提案・実証
    • 着火遅れ時間および熱発生プロフィールを高精度に再現可能な高級炭化水素の簡略化反応機構を構築
    • 超高圧噴射による燃料と空気の混合促進効果を可視化実験により明らかにし高EGR・上死点近傍超高圧噴射による高効率PCCI燃焼コンセプトを構築
    • 多段噴射双峰形燃焼と内部伝達系振動数移動により、放射音を増大させることなく高熱効率を得る技術を構築
    • RAICA:モデルをベースにしたエンジン制御システムの構築
    • HINOCA:3次元エンジン燃焼解析ソフトフェアの構築
    • RYUCA:エンジン筒内PM生成モデルの構築
    • ターボチャージャの損失発生原因解明に基づくSIP仕様ターボチャージャの効率向上により、ガソリンエンジン(0.56%pt)、ディーゼルエンジン(2.24%pt)の熱効率向上を達成
    • ターボチャージャの脈動流下運転が原因で誘起される損失の発生機構・特徴を解明、脈動流による非定常損失の予測手法を構築
    • 初の複合材料化で、結晶中の分布形態制御による機械特性と熱電特性の両立手法を新規に確立 中低温度域熱電モジュールを開発し実証試験・伝熱精密解析によるGT-Powerモデルを構築
    • 基礎研究による低摩擦発現要素のエンジン部品化と基本諸元の見直しによりファイアリング条件でΔ50%超の摩擦損失低減を達成
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