二つの文化と科学革命
C・P・スノー  
松井巻之助/訳
みすず書房 1967年
1959年に行われた有名な講演である。いわゆる「理系」と「文系」の問題を語る際には必ず引き合いに出される。スノーはこの講演において、伝統的な知識人(文系の人々)と科学者がまったく異なる知的文化を形成し、相互無理解が生じていることを指摘し、それがイギリスの衰退を招くことへの懸念を表明した。理系の人々が伝統的な文系的教養を欠いていることが指摘はされているものの、基本的な論旨は、文系知識人が科学を軽蔑し無理解なことを批判する点にあった。また、科学や産業技術が人類にもたらした、そして今後もたらすであろう恩恵を強調し、文系知識人の閉鎖的なエリート主義を批判する点で、時代の刻印を示していることは確かである。とはいえ、この講演は、イギリス国内に大きな論争を巻き起こすとともに、エジンバラ大学にSTS研究で有名なScience Studies Unitの設立のきっかけにもなった。50年後の日本において、「二つの文化」は克服されているであろうか。
(小林傳司:大阪大学コミュニケーションデザイン・センター 教授)