科学と実在論
超越論的実在論と経験主義批判
ロイ・バスカー  
式部信/訳
法政大学出版局 2009年
科学の社会的・階層的性格について統合的に展開した批判的実在論の古典であり、待望の翻訳である。「科学のための哲学」を目指し、科学という社会的活動を可能にする条件とは何かと問い、その答えを人間の存在や認識とは独立した事物からなる世界に見出す。批判的実在論は社会学や経済学などに革新的な視座やパラダイムを持ち込んだほか、評価や政策分析、科学技術社会論における経験的手法としても発展され続けている。実験室や工場で生産される科学や技術ではなく、開かれた世界にある社会技術を思索する礎としてもっと認められてよい。
(吉澤 剛:大阪大学大学院医学系研究科社会環境医学講座 准教授)