社会科学と社会政策に
かかわる認識の「客観性」
マックス・ヴェーバー 
富永祐治・立野保男/訳 折原浩/補訳
岩波文庫 1998年
21世紀の科学の責務として、「知識のための科学」にくわえて、「社会のなかの、社会のための科学」が宣言(いわゆる「ブタペスト宣言」)されて10年が経った。これから1年後には政府決定が予定される「第四期科学技術基本計画」において、社会の問題解決のための科学・技術システム、自然科学と社会科学・人文学との協働、それを推進するための研究評価法・関与者間のプラットフォームの形成が、大きな柱になりそうである。
「認識と価値判断とを区別する能力、事実の真理を直視する科学の義務と、自分自身の理想を擁護する実践的義務とを、双方を区別し緊張関係に置きながら、ともに果たすこと、これこそ、われわれがいよいよ十分に習熟したいと欲することである」。1世紀前のヴェーバーの冷静でかつ熱い言葉である。21世紀の最初の10年を終えて、"価値中立"を旨としてきた科学・技術と、価値判断を必要とする社会、人との関係性が急速に深まる中、本書は改めて熟読する価値があると思う。
(有本建男:独立行政法人科学技術振興機構社会技術研究開発センター センター長)