成果概要
Awareness Musicによる「こころの資本」イノベーションと新リベラルアーツの創出2. 「市民体験参加型音楽・感性脳科学研究プラットフォーム構築と社会実装」
2022年度までの進捗状況
1.概要
本研究では、子どもから成人までを含めた市民体験参加型の音楽・感性脳科学研究プラットフォーム(MKOS)を構築し、楽しみながら感性脳科学研究に参加するMusic Edutainmentの基盤確立を目指し、ELSIについても参加者と活発な議論を行っています。音楽による脳-内受容感覚ネットワーク(BIN)に及ぼす効果の実施可能な生体計測のFeasibility Studyを行い、感性とBINに及ぼす効果を誰もが享受できるMusic Edutainment研究プログラムの開発を目指しています。
2.2022年度までの成果
【MKOS構築と生体計測フィージビリティ・スタディ】
2022年7月に公共施設の協力のもと、約100名の幅広い年齢層の小中高大学生、社会人の多様な演奏者・プロ演奏家から成るオーケストラと約200名の鑑賞者が参加し、音楽ワークショップ(WS)を実施しました。大規模会場での音楽演奏中の指揮者・演奏家の生体計測から、演奏時の心拍増加や演奏家間の心拍同期等が見受けられました。
また、内受容感覚主観アンケートの調査をアプリで実施し、演奏・鑑賞前と演奏・鑑賞後に演奏者・鑑賞者から回答を得ました。利用した演奏家からは、操作性、質問内容、演奏前後の入力タイミングの再検討等の提案がありました。
【MKOSにおけるMusic Edutainment基盤モデル構築】
2022年10月に教員・演奏家・舞踏家を対象に、課題推進者(本田、笹岡、町澤)と共同で超高周波体験中の生体計測を実施しました。また、今後実験室外で脳波計測をするにあたり、環境ノイズに対応するため、電磁ノイズ計測器を用いて会場で計測を行い、脳波計測に支障がないことを確認しました。さらに、今後のMusic Edutainmentの教材作成のため、音楽演奏時に発生する楽器ごとの超高周波数を計測しました。
【PM、他PIとの共創研究】
2022年12月にヤマハ株式会社の協力のもと、演奏者10名、聴衆6名(演奏後の演奏家、音楽教育関係者)で、演奏時と聴取時の残響効果の違いの調査と、新たな主観心理質問紙作成のためのデータ収集を行いました。生体計測では残響による演奏時の心拍変化が見られ、BPQ超短縮版による調査では、聴取時の感情変化に差異があることが分かりました。また、主観心理質問紙では、音楽経験後のポジティブ・ネガティブ等の感情変化が見受けられました。
3.今後の展開
本研究では、次年度以降のWS開催地域の拡大のため、教育委員会・協力校・地域コミュニティとの連携を継続していきます。また、MS9活動内容の情報発信を幅広く行い、参加者を増やすことで、より多様で大規模なプロジェクトの実現を図ります。
さらに、研究成果を音楽療法に結び付け、心身の健康のための予防策として、音楽療法を義務教育における音楽の授業の中で学べるようにすることを目標とします。伝統知である音楽療法に科学的要素を加味し、多様な感性に対応させることで、一人一人がより精神的に豊かで躍動的な社会の実現を目指します。
(西本智実・広島大学)