成果概要
身体的共創を生み出すサイバネティック・アバター技術と社会基盤の開発[4] 身体的共創を生み出すCA基盤の構築と運用(CA基盤研究グループ)
2023年度までの進捗状況
1.概要

人とCAとを双方向に接続し、経験と技能を流通するデジタルネットワーク
サイバネティック・アバター(CA)による身体的共創を実現するため、他のグループが開発している認知拡張・経験共有・技能融合のコア技術を統合し、多様な人と多数のCAとの間で身体感覚を双方向に伝送するCA基盤を構築します。CAを通じた身体的共創により、サイバー・フィジカルな空間における人の身体的な経験や技能の流通・融合・利活用を可能とすることで、目標1が目指すCA基盤の実現に貢献します。

身体的共創を生み出すCA接続基盤技術の構築と応用展開
南澤 孝太(慶應義塾大学KMD)

次世代CAクラウドの構築と運用および国際標準化の推進
深堀 昂(avatarin株式会社)

Cybernetic Human-Link の実現に向けたデジタル神経技術の開発
佐藤 雅明(東海大学)
2.これまでの主な成果
- (1) 複数の人と複数のCAを接続する「M×N」CAプラットフォームとALS患者を対象とした身体拡張への応用展開
- (2) CAを通じた身体感覚および情動共有技術の開発
- (3) 身体共創社会推進コンソーシアムによる産学共創展開
- (4) CAの社会実装に向けた公共空間でのCA運用実験
(1)では、経験共有研究グループと技能融合研究グループとの連携により、2人の操作者が3体のCAを操作するシステムを構築しました。この基盤技術の応用展開として、重度の身体障碍を有するALS患者らの身体拡張の実現を目的とし、手や視線によらずに脳波を用いてロボットアーム操作を行うシステムを開発しました。本システムは、Brain Body Jockey(B2J) プロジェクトにおいて実証実験を行いました。
(2)では、装着型や着座型の装置を用いて他者の触覚を伝達することで、他者の体験を自身に取り込むことを可能とする体験共有CAの要素技術開発を行なっています。身体感覚の共有のみならず、バーチャルなCA環境において利用者の生体情報を計測することで情動変化を推定しCAに反映することで、より共感的なコミュニケーションの実現を目指しています。
(3)では、本プロジェクトが目指すCAを通じた身体的共創の社会実装を目的とした産学共創のコミュニティとして、2021年10月に「身体共創社会推進コンソーシアム」を設立し、現在36社6団体の参画を得ています。このうち、日本工芸産地協会との共創プロジェクトでは、CAを活用した職人の技能や経験の共有に向けて取り組んでいます。
(4)では、CAの実社会での利活用における諸課題を抽出し、通信環境や動作環境に求められる要件を明らかにするため、水族館や空港など公共空間における実証実験を行っています。




3.今後の展開
実世界のロボットとバーチャル空間を自在に行き来できるようなサイバーフィジカル型のCA環境を構築し、M人N体の身体的共創の実現に取り組みます。CAを通じた身体能力の拡張や身体的共創をより高度に実現するためには、CAの身体そのものを自身の肉体と同等あるいはそれ以上の主体感をもって操れる必要があります。そこで、人の認知的特性や身体性の理解に基づいたデジタル神経技術とも呼べる超高速低遅延のネットワーク環境を介して、CAを自分の身体を超えるスピードで扱うことができるCA通信基盤の構築に取り組みます。