成果概要

身体的共創を生み出すサイバネティック・アバター技術と社会基盤の開発3. 身体技能の多様性融合技術(技能融合研究グループ)

2022年度までの進捗状況

1.概要

自分と他者の技能を融合し個人の能力を
超えられる身体

複数人が1つのサイバネティック・アバター(CA)に同時接続し、互いの感覚と運動を共有しながら行動することで、人々が持つ多彩な身体技能を共有し融合するための技術を開発します。技能を共有し個々人の能力を超えた高度な技能を発揮できるCAを実現することで、目標1が目指す「身体の制約からの解放」に貢献します。

田中 由浩(名古屋工業大学)

身体の多様性を包摂する技能共創技術の開発
田中 由浩(名古屋工業大学)

大澤 博隆(慶應義塾大学)

身体融合における意図調停と身体反応制御技術の開発
大澤 博隆(慶應義塾大学)

平田 仁(名古屋大学)

サイバネティック・アバター技術によるフレイル治療に向けた内在的能力賦活化
平田 仁(名古屋大学)

2.2022年度までの成果

  • (1) 2人で1つのロボットを操作して連携協調する技能融合CAプラットフォームを開発
  • (2) 技能融合CAを活用した重度の障害当事者による遠隔共創作業の実現
  • (3) 触感覚の伝送による技能の遠隔共有・学習手法の開発

(1)では、異なる技能や経験を有する他者との身体的な共創を実現することを目指し、1つのロボットを2人の操作者が同時に操作し協調作業を行う技能融合CAプラットフォーム 「Collaborative Avatar」を開発しました。2人の運動を一定の割合で融合したり、動作の役割分担をすることで、1つの身体性を両者で共有することができます。

(2)では、技能融合CAを障害当事者の就労支援に活用しており、分身ロボットカフェにて2人の重度障害当事者(外出困難や上肢障害)が技能融合CAを使って、一般客に向けてパンケーキのトッピングを行うサービスを1ヶ月間実施しました。この実証実験を通じて、操作者が、CAを介した遠隔かつ融合しながらの作業に主体感を持っていたこと、さらに他者とのCAを介した連携協調によって個人の能力・創造性の拡張を感じたことを示し、技能融合CAが円滑な連携協調と個々人の創造性の発揮を両立できることを明らかにしました。

(3)では、ネットワーク越しに人から人への直接的な技能共有を実現することを目的に、触感覚の共有に基づく技能の遠隔共有基盤の開発を進めています。指先の触感覚を計測して映像と併せて遠隔に伝送し体験を共有することで、遠隔地にいる理学療法士が拘縮の評価を行える遠隔触診システムや、現場にいる利用者が遠隔地にいる熟練者の技能を体験できるシステムのプロトタイプを開発しました。また、対象作業をしながら熟練者の触覚を時空間を超えて自身と重ね合わせて体験することによる技能学習法を提案し、技能伝承の高効率化、高精度化などへの活用を目指しています。

(1) 技能融合CAプラットフォームの開発 (1) 技能融合CAプラットフォームの開発
(1) 技能融合CAプラットフォームの開発
(2) 技能融合CAを活用した、2人の重度身体障害者によるパンケーキ共創トッピングの実現 (2) 技能融合CAを活用した、2人の重度身体障害者によるパンケーキ共創トッピングの実現
(2) 技能融合CAを活用した、2人の重度身体障害者によるパンケーキ共創トッピングの実現
(3) 触感覚の伝送による技能の共有(触診/木工)と技能学習の試み (3) 触感覚の伝送による技能の共有(触診/木工)と技能学習の試み (3) 触感覚の伝送による技能の共有(触診/木工)と技能学習の試み
(3) 触感覚の伝送による技能の共有(触診/木工)と技能学習の試み

3.今後の展開

技能融合CAの社会応用や高度化を目指し、個々人のCA操作モデル(AI)との融合や、3人以上による技能融合を進めています。作業性のみならず心理的側面や脳活動にも着目し研究を進めます。AIとの融合では支援にとどまらず、個性を持ったAIとの共創的な融合を目指します。
人から人への直接的な技能融合については、感覚共有に加えて、筋刺激なども導入し、運動情報の入出力による共有にも取り組みます。技能伝承や、高齢者におけるフレイル予防などを対象とし、感覚・運動共有の効果を検証します。