成果概要
身体的共創を生み出すサイバネティック・アバター技術と社会基盤の開発[2] 経験の並列化と融合的認知行動技術(経験共有研究グループ)
2024年度までの進捗状況
1. 概要

自分の身体経験を並列化し
異なる時空間を同時に
知覚し行動できる身体
サイバネティック・アバター(CA)により、1人が1つの身体を持つ前提を超えて、複数の身体を通じて並列的な身体経験を得る技術を確立するため、身体の主体感と自己の連続性を保ちながら、複数の身体感覚の融合的な知覚を通じて、CA間の自在な移動を可能とする認知行動技術を開発します。運動や感覚のみならず情動の保存と追体験も可能にする技術を開発し、人々がCAを通じて得た経験を互いに共有できるようにすることで、目標1が目指す「身体、空間、時間の制約からの解放」に貢献します。

身体の並列化における融合的行為主体感生成技術の開発
笠原 俊一(ソニーコンピュータサイエンス研究所)

身体共創行動技術への適応を可能にする脳可塑性機序の解明
柴田 和久(理化学研究所)

生体情報計測に基づく情動のデジタル化と経験の圧縮技術の開発【2024年度~】
南澤 孝太

CAにおける主体感のモデル化と可観測化【2024年度~】
温 文(立教大学)
2. これまでの主な成果
- (1)2人を相手に卓球対戦できる並列化CAシステム「Parallel Ping-Pong」を開発
- (2)人間の速度を超える素早い動作が可能な外骨格インタフェースの開発
- (3)人間の判断・運動を超えた超身体システムAgiLimbの開発とスポーツ体験の実現
- (4)CAのための早く柔軟な感覚運動応答を実現する脳の仕組みを解明
1人の利用者が複数の身体を通じて並列的な身体経験を得る体験検証のために、(1)では卓球を題材とした並列化CAを開発しました。利用者は2体のCAに同時に接続し、CAのAIアシストと2体のCA視点映像を融合して観測することで、1人の利用者による2体のCAの同時操作を実現しました。
(2)では、西田PF(技能融合研究グループ)との連携により、人間の反応速度や動作速度を大幅に超えるハンドエグゾスケルトン(外骨格)を開発しました。この技術により、ユーザーは自分の意志で動かしている主体感を感じながら、非常に速く正確に自身の身体を動かす事ができるようになります。人間の自然な反応速度を超えた新しい体験、作業効率や体験の質を大幅に向上させることを目指しています。
(3)では、新山PF(認知拡張研究グループ)との連携により、人間の知覚や身体能力の限界を超える動作を実現するためのシステム「AgiLimb」を実現しました。人間の判断・運動を超えながらも、自己の身体の延長として感じ、バッティングや投球などの速度と精度が求められるスポーツにおいて子どもたちがCAを通じて能力を発揮できることを実証しました。
(4)では、複数CAを身体化する機序の解明のため、脳波で脳活動を計測し、デコーディング技術等で解析しました。視覚情報や運動応答のルールが次々切り替わる環境で素早い判断を支える脳メカニズムを解明しました。
(Nature Communications, 2024)。


3. 今後の展開
「1人の人間は1つの身体を持つ」という従来の前提を覆し、1人が複数のCAを自在に駆使できる未来を目指します。その核心を成すのが「Cybernetic Human link」構想です。本構想では、インターネットを身体の神経網のように機能させ、遠隔地のCAであっても、あたかも自身の身体のように遅延を感じず主体感を伴って操作可能とし、さらには人間本来の反応速度や判断・運動能力の限界をも超越する新たな身体能力、いわばCAを通じた「超身体」の獲得を目指します。この構想の実現に向けて、今後、次世代CAインタフェース技術の開発と、人間の認知や主体性メカニズムの解明に迫る脳科学研究を不可分の両輪として推進します。