成果概要

身体的共創を生み出すサイバネティック・アバター技術と社会基盤の開発[1] 身体性と社会性の認知拡張技術(認知拡張研究グループ)

2024年度までの進捗状況

1. 概要

状況や環境に応じて
自分の可能性を
自在に引き出せる身体

身体とこころ、身体と社会的能力の相互作用を解き明かす研究に取り組み、生身とは異なる身体特性を持ったサイバネティック・アバター(CA)の使用によって利用者が自らの潜在能力を本来以上に発揮したり、多様な身体的経験や価値観を得て他者への共感や協調といった社会性を高めたりする条件を明らかにします。この知見に基づいて、適切な身体特性を持ったCAを活用して利用者が状況や環境に応じて自分の望む能力を自在に発揮でき、誰もが社会の中で、自分らしいあり方で活躍できることを支援する認知拡張技術を実現し、目標1が目指す「身体・認知の制約からの解放」に貢献します。

鳴海 拓志(東京大学情報理工学系研究科)

社会性拡張のための身体性制御技術の開発
鳴海 拓志(東京大学情報理工学系研究科)

嶋田 総太郎(明治大学)

身体性・社会性変容の認知脳科学的機序の解明
嶋田 総太郎(明治大学)

新山 龍馬(明治大学)

身体性変容を具現化する実世界アバター構成技術の開発
新山 龍馬(明治大学)

2. これまでの主な成果

  • (1)CAの身体特性が利用者の認知能力や社会性に与える影響を多角的に解明して認知拡張技術を開発
  • (2)身につけられる柔らかいウェアラブルCAロボットを開発
  • (3)CAでの体験を通じてさまざまな人がお互いの違いを超えて理解しあうための基盤を開発し、多様な場面で利用者の能力発揮とwell-beingの向上を実現

(1)では、CAの身体特性が利用者の認知能力や社会性に与える影響を様々な観点から検証し、適切な身体特性を持つCAを使い分けることで、身体的・認知的能力の獲得、記憶力の増強、ひらめきの促進等の認知拡張を実現する技術を開発しました。さらに、利用者がCAを受容しているかを脳活動から判定する方法を確立しました(図1-1)。また、複数人でCAを使用する際の自他のCAの特性の違いが上述のような認知拡張効果を強め(図1-2)、集団でのCAでの体験の利用が効率的に生産性や社会性を向上させることを確認しています。

(2)では、認知拡張効果をいつでもどこでも利用可能にするため、柔軟素材で構成されたソフトロボットを活用し、衣服のように軽量で身につけやすく、必要なときだけ膨らんで使用できるウェアラブルCAロボットを開発し、展示やワークショップで収集した意見から受容性の高いデザインを示しました(図2)。

(3)では、認知拡張技術を社会活用し、さまざまな現場でその効果を確認しました。例として、認知拡張効果を使って子育てにまつわるアンコンシャスバイアス解消を図るワークショップ(図3-1)を設計し、誰もが働きやすい職場作りを支援できることを実証しました。さらに、誰もが自分の経験をコンテンツ化して他者と共有できる場として人生経験交換メタバース(図3-2)を開発・公開し、経験の共有と他者との対話を通じて自己への気づきを促す仕組みを実現しています。また、外出困難者が自分らしさを表現できるCAで接客に従事できる拡張アバター接客を実現し、接客技能や働きやすさだけでなく、利用者のwell-beingを高められることを明らかにしました(図3-3)。

(1-1)
(1-1) CAの受容/非受容を反映する脳活動指標を特定
(1-2)
(1-2) 他者のアバターとの対比が認知拡張効果を増幅させる
(2)
(2) 身につけられ必要なときだ現れるウェアラブルCA
(3-1)
(3-1) アンコンシャスバイアスワークショップの展開
(3-2)
(3-2) 多様な人生を一緒に追体験できる人生経験交換メタバース
(3-3)
(3-3) CAによる自己表現を取り入れた拡張アバター接客

3. 今後の展開

社会の様々な場面でCAによる認知拡張技術が活用可能になるように、CAによって拡張可能な認知能力の幅を増やし、それらを活用してwell-beingを高めるための条件を明らかにしていきます。同時に、CAの継続的な利用が、利用者にどの程度の身体的・認知的負荷を与えているのか、あるいは良い効果を与えているのかを、身体や脳への影響の観点から詳しく明らかにしたり、利用者の生きがいやアイデンティティを含む長期的な観点の自己変容にどのような影響を与えているのかを明らかにしたりすることで、社会の中で継続的に使いやすく、より良く生きることに繋がる認知拡張技術を開発していきます。