成果概要
身体的共創を生み出すサイバネティック・アバター技術と社会基盤の開発[6] CA時代の倫理と社会制度の設計(社会システム研究グループ)
2023年度までの進捗状況
1.概要

CAで人々の身体が拡張される未来における社会ルールと倫理規範
人々が日常的にサイバネティック・アバター(CA)を活用する社会において守るべき権利や責任の所在、経験や技能のデータの流通と管理といった社会的な諸課題について、法学、社会科学、科学技術社会論など多角的な方面からの検討を行うことを通じ、CA時代の倫理と社会制度のデザインを探求します。誰もがCAを用いて自在に活躍できる社会を制度面から支えることで、目標1が目指す「サイバネティック・アバター生活」の実現に貢献します。

CAの法解釈学および法政策学的研究
赤坂 亮太(大阪大学 社会技術共創センター)

CA時代の倫理と社会制度の設計
江間 有沙(東京大学 未来ビジョン研究センター)

デザインフィクションを用いたサイバネティック・アバター社会の探索
大澤 博隆(慶應義塾大学)
2.これまでの主な成果
- (1) CAが活躍する社会において課題や解決策の検討を行う研究会の開催とガイドラインの発行
- (2) CAに関する国内でのフィールドワークおよび国際行政との連携と議論の推進
- (3) SFプロトタイピングによる未来デザインのための予備的活動
人々が生活の中の様々なシーンでCAを活用し、新たな働き方・学び方・楽しみ方を日常的に行う社会を実現するためには、近未来のCAの具体的なユースケースを想定し、どのようなELSI(倫理的・法的・社会的課題)があるかを洗いだし、それらに対処する新たな倫理と社会制度をデザインすることが求められます。そこで(1)では、専門家や事業者、CAを利用しはじめている当事者とともにCybernetic Avatar Society (CAS) 研究会を開催し、関係するステークホルダーに関する倫理的・法的・社会的課題について議論し、その結果CAを用いて働く者の法的な取扱い、CAプラットフォームを担う事業者の取り組むべきガバナンスに課題があることを抽出しました。このような課題について取り組む指針となるガイドラインの第一弾を作成し、冊子として頒布しました。
(ガイドラインURL:https://cybernetic-being.org/activities/avatarrobot_workdesign_guideline_2024/)

(2)では社会共創研究グループとともに分身ロボットOriHimeを用いた実証実験や、学校や職場での利用に関するフィールドワーク調査を行っています。利用者および関連する自治体等へのインタビュー調査からは、就職先の新たな「選択肢」を提供するCAへの期待や、働き方の柔軟さを支える仕組み、法の整備が重要と指摘されています。一方で、法や各国の文化的・社会的背景の違い等CAを社会実装する背景的な課題について議論する必要があることから、GPAI(Global Partnership on AI)など国際行政の場等において行政担当者や海外研究者との交流および議論を開始しています。

(3)では、今後の足がかりとして科学技術に詳しいSF作家を招いたSFプロトタイピングを行い、SFプロトタイピングで新しく見つかりそうなCAの問題点につき論点を抽出しています。
直近5回のCAS研究会
- CAS研番外編
- (2022年3月3日)
- 「VRでアンコンシャス・バイアスへの気づきを促せるか?:子育てを取り巻く仕事環境を考えるワークショッププロジェクト」
- 第6回CAS研究会
- (2022年6月14日)
- 「メディアから見るCAを用いた働き方とガイドライン」
- 第7回CAS研究会
- (2023年1月25日)
- 「CAプラットフォームのガバナンス」
- 第8回CAS研究会
- (延期調整中)
- 「メタバースの秩序形成」
- 第9回CAS研究会
- (2023年12月1日)
- 「CAと人間のコCAミュニケーション」
3.今後の展開
これまでの実証実験で得られた知見に基づき、CAを利用して働く利用者とCA利用者を雇用する雇用主である企業、それぞれを対象に、現行の法体系や社会制度のもとで、どのような環境づくりや仕組みづくりが必要か、どのような懸念が想定されどのように対処するべきか、ELSI的観点に基づくガイドラインを策定し公開することで、実社会における適切なCA就労の普及啓蒙に努めます。
また、未来のCA社会における暮らしの変化や働き方の変化を予測し研究開発に反映するために、バックキャスティングによる未来デザインの手法の1つである「SFプロトタイピング」を活用し、SF作家と研究チームとの連携のもと、一般に広く受け入れられるようなCA社会シナリオのデザインに取り組みます。