成果概要

誰もが自在に活躍できるアバター共生社会の実現[8] アバター社会倫理設計

2024年度までの進捗状況

1. 概要

本研究開発項目では、サイバネティック・アバタ―(CA)利用における倫理・法律問題の研究とモラルコンピューティングの実現に取り組んでいます。幅広い見地からCA利用の社会倫理を議論し、提案することは、今後CAの開発が進み、社会に普及していく上で不可欠です。この目的のために、倫理、法律、工学の研究者が共同して、アバター社会倫理に関する議論を深めます。
工学的なアプローチの研究では、CA利用者の不適切な行動も、自動的に適切な行動に変換するCAの機能である、モラルコンピューティングの研究開発と、文化適応性も考慮したホスピタリティを高めるCAの行動生成の研究を行います。また、社会倫理の研究では、CAが社会に普及した場合に起こりうる、社会、倫理、さらには心理的な影響を検討します。法律の研究では、アバターの認証制度、プライバシー問題、アバター社会実装における法的問題について検討します。

2. これまでの主な成果

アバター社会実装ガイドラインの作成

国内・国際シンポジウム、国際ワークショップ、アバターモラル体験会(図1)等を実施し、アバター社会倫理設計について幅広い分野の専門家(法律、倫理、工学、教育、SF作家等)と議論を深めました。その成果をまとめ、アバター社会実装ガイドラインを作成しました。

図1
図1:アバターモラル体験会
<ガイドラインの主な観点>

社会的ウェルビーイングを高めることを最重要の目的とし、新技術に対する心配・信頼の問題(法的・倫理的課題等)へ配慮しつつ、新技術を社会に普及させるためにそれらの課題を克服していく必要がある。

【配慮】操作者への配慮と利用者への配慮。
【普及】CAの社会への普及において目指すべきこと。

  • 誰もが平等にCAの活用機会を享受できること。
  • CAを使ってサービスの質と生産性を向上させること。
  • CAを使って持続可能な社会の実現に貢献すること。
モラルコンピューティングとアバターホスピタリティの研究

① モラルコンピューティングの研究:不適切な発話をするオペレータを検出し、丁寧な発話に変換して相手に伝える技術を開発しました。これによりCA操作者の作業負荷が低減することが確認されました。また、ロボットが急停止せざるを得ないとき、見回し、体の回転、緩やかな減速を用いて停止前に警告を発する手法を開発しました。本手法をショッピングモールにて実装・評価した結果、通行者への影響を大幅に軽減することができました(図2)。

図2
図2:ロボット動作による停止警告

② CAとのインタラクションについての文化比較実験:スペインの大学内の飲食施設、市内の科学博物館等で、CAの実証実験を行いました。また、人、ロボット、CGキャラクタとのインタラクションについて、スウェーデンとの文化比較的実験を行いました。その結果、日本ではロボットやCGキャラクタに親近感がある一方、より人の指示に厳密に従うことがわかりました。

社会倫理・法律課題の研究

① 社会倫理の研究:アバター技術に対するイメージ調査を日本、アメリカ、スペインで実施し、一般の方々のアバターに対する期待や懸念について、意見を集約しました。どの国でも最も懸念されているのは「アバターを他人に貸し、本人になりすまさせる」、「アバターを利用して不在を誤魔化す」、「複数のアバターを使って意見をコントロールする」などで、人種や宗教などの特徴の表象については日本の懸念が最も強く、ジェンダーステレオタイプについてはスペインの懸念が最も高く、未成年の使用についての懸念では日本は低く、アメリカとスペインは高い、等と言ったことが分かりました。一方、アバターに期待することとして、三か国で共通して「なりたい自分になれる」、「社会参加が難しい人が社会参加できるようになる」といった側面への期待がありました。

② 法的課題の検討:1)プライバシー保護の観点からアバターのなりすましを巡る法的課題や、仮想空間におけるアバターの不正利用について議論しました。2)アバター認証の制度的課題について提案しました。3)一般人とは異なる社会的地位にある人物(警察官などの公安職等)のCAを利用するにあたっての課題を抽出するために、国内外の法規制等について調査を行いました。

3. 今後の展開

  • シンポジウム、ワークショップ等の活動を引き続き行い、アバター社会倫理の議論を深めるとともに、アバター社会実装ガイドラインの改良と普及を目指します。
  • モラルやホスピタリティに関する文化差について調査するとともに、文化適応的なCAの開発を目指します。
  • アバターの社会普及における、社会倫理、法律、心理的課題を明らかにしていきます。