成果概要

誰もが自在に活躍できるアバター共生社会の実現8. アバター社会倫理設計

2022年度までの進捗状況

1.概要

本研究開発項目では、サイバネティック・アバタ―(CA)利用における倫理・法律問題の研究とモラルコンピューティングの実現に取り組んでいます。この目的のために、倫理、法律、工学の研究者が共同して、アバター社会倫理に関する議論を深めています。
アバター共生社会倫理コンソーシアム(図1)では、設計ミーティング会員が中心となり、CA社会実装に向けたガイドラインの作成に取り組んでいます。工学的なアプローチの研究では、 CA利用者の不適切な行動も、自動的に適切な行動に変換するCAの機能である、モラルコンピューティングの研究開発と、ホスピタリティを高めるCAの行動生成方法についての検討を進めました。また、社会倫理の研究では、CAが社会に普及した場合に起こりうる、社会、倫理、さらには心理的な影響を検討し、法律の研究では、アバターの認証制度、プライバシー問題、アバター社会実装における法的問題について検討を進めました。

図1:アバター共生社会倫理コンソーシアム
図1:アバター共生社会倫理コンソーシアム

2.2022年度までの成果

①アバター共生社会倫理コンソーシアムの活動状況と成果:アバター社会実装ガイドライン(草案)の作成

アバター共生社会倫理コンソーシアムでは、これまでに、シンポジウムを3回、コンソーシアム主催の国際ワークショップ3回、アバター体験会等のワークショップ4回、設計ミーティングを毎月1回実施し、アバター社会倫理設計について内外の幅広い分野の専門家(法律、倫理、工学、教育、SF作家等)と議論を行ってきました。詳細についてはコンソーシアムウェブページに掲載されています(https://www.asedc.org/)。
コンソーシアムの設計ミーティング会員が中心となり、アバターに関するイノベーションを社会に実装する際に考慮すべき点について、法律、倫理、技術的観点から検討を進めてきました。その成果をまとめ、アバター社会実装ガイドラインを作成しました。主な観点を以下に示します。

  • 社会的ウェルビーイングを高めることを最重要の目的とし、新技術に対する心配・信頼の問題(法的・倫理的課題等)へ配慮しつつ、新技術を社会に普及させるためにそれらの課題を克服していく必要がある。
  • ◆【配慮】CA開発における心配・信頼に係る問題への配慮が必要である。
    • 操作者への配慮:
      • サービス利用者の不適切な利用を防止する。
      • 操作者の操作記録の利用には、本人の同意を得る。
    • 利用者への配慮:
      • 操作者の不適切な操作や利用を防止する。
      • CAの操作がAIにより行われている間はその事実を表示する。
  • ◆【普及】CAの社会への普及において目指すべきこと。
    • 誰もが平等にCAの活用機会を享受できること。
    • CAを使って、サービスの質と生産性を向上をさせること。
    • CAを使って持続可能な社会の実現に貢献すること。
②モラルコンピューティングの研究

オペレータがうっかりと他者の進路をふさぐCA操作を行ってしまう行動を検出し、それをオペレータに認知させる支援方法を提案しました。また、不適切な発話をするオペレータを検出し、丁寧な発話に変換して相手に伝える技術を開発しました(図2)。

図2:モラルコンピューティングシステム
図2:モラルコンピューティングシステム
③社会倫理・法律課題の研究

(a)社会倫理の研究:アバター技術に対するイメージ調査を実施し、一般の方々のアバターに対する期待や懸念について意見を集約しました。
(b)法的課題の検討:1)プライバシー保護の観点からアバターのなりすましを巡る法的課題や、仮想空間におけるアバターの不正利用について議論しました。2)アバター認証の制度的課題についても提案しました。3)匿名の参加を可能とするアバターを活用することにより、参加者の心理的障壁を下げ、議論を活発化させることができ、より多くの人による双方向の議論が可能になることを提案しました。

3.今後の展開

  • アバター社会倫理コンソーシアムが主体となり、シンポジウム、ワークショップ等の活動を引き続き行い、アバター社会倫理の議論を深めるとともに、アバター社会実装ガイドラインの改良と普及を目指します。
  • 幅広い方々との議論の機会を設け、アバター社会倫理設計の議論を発展させていきます。
  • 実証実験を通して、CA利用における社会倫理、法律、心理的課題を明らかにしていきます。