成果概要

誰もが自在に活躍できるアバター共生社会の実現7. 実社会実証実験

2022年度までの進捗状況

1.概要

場所、サービス、サイバネティックアバター(CA)開発に関する3つの業種の企業を組み合わせた実証実験が可能な、CAに特化した通信環境を含む実証実験基盤を開発します。2025年大阪・関西万博や、大阪市内、東京都内で大規模かつ実用的な実証実験を実施するため、準量産型CA等も準備します。他の研究開発テーマ、および複数企業とも企業コンソーシアムを通じて連携し、商業分野を中心に様々な実社会実証実験を実施するとともに、CAの社会実装に取り組みます。本研究開発テーマが単体で取り組む領域としては、発達障害者やうつ病患者といった精神障害者を対象としたメンタルヘルスケア、および高齢者を対象とした社会参加、以上の2つについて重点的に実証実験を実施し、CAの実現と課題を明らかにしていきます。

2.2022年度までの成果

  • 実証実験基盤構築と商業分野における受付・案内等の実社会実証実験
    CA3体による受付・案内サービスが提供可能な遠隔操作ソフトウェア、CA(実機)、およびサービスを提供する環境を計測するためのセンサネットワークを構築しました。CAのための通信に関しては、5G通信のコアシステムを拡張し、移動型CAの位置予測結果に基づいて適切な無線リソースを配分する5Gリソース制御技術を実装し、実験により有効性を示しました。研究開発テーマ1(存在感・生命感CAの研究開発)、研究開発テーマ7(実社会実証実験)と連携し、移動型CA(Teleco)と設置型CA(Geminoid-TK、皮膚を着脱可能な人酷似型CA)を開発するとともに、企業エントランスにおける受付・案内長期実証実験、三箇所のインキュベーションオフィスの受付(東京、京都、大阪)を1人の遠隔操作者が行う多地点受付実証実験、百貨店での現役閣僚に酷似したCAによる公務の社会受容性検証実験などを通じて検証し、実証実験基盤の有効性の検証、システムの改良を継続的に行っています。
  • 発達障害者やうつ病患者のメンタルヘルスケアを対象とした実社会実証実験
    メンタルヘルスケア領域では、発達障害者がCAの表情や動作から受ける影響が大きく、個々の精神状態に対応した表情・動作を適切に選択する必要があることから、昨年度構築した発達障害者・うつ病患者のCAとのインタラクション時の会話・生理データ等のデータベースに基づき、個々の精神状態に対応したCAの表情・動作の設定をモデル化しました。さらに、医療・教育現場におけるCA社会実証実験を12施設で実施しました。
  • 高齢者の社会参加を対象とした実社会実証実験
    高齢者を対象とした取り組みとしては、昨年度開発した単体CA遠隔操作システムを活用した実験に加えて、2つのタスク、2体のCA遠隔操作できるインタフェースを開発し、それを用いた高齢者による遠隔操作実験も実施しました。大阪府堺市の協力を得て、遠隔操作拠点を泉北ニュータウン内に設置することができました。
    企業連携を進めるために設立したアバター共生社会企業コンソーシアムは、2023年3月末現在で105法人が会員として登録しています。コンソーシアムでは,本プロジェクトの成果を紹介するとともに、業種・業態毎に4つの分科会を立ち上げ、CAを活用した新事業の検討を進めています。

3.今後の展開

本プロジェクトの研究開発成果を逐次活用し、実証実験基盤を継続的に開発するとともに、実社会実証実験を実施・運用していきます。特に、バックキャスティング型実証実験に注力し、社会受容性を検証しつつ社会実装を行います。実社会実証実験の結果から、各研究開発項目へ課題等をフィードバックするとともに、研究開発項目5で実施するCA基盤の構築および国際標準化活動に反映させます。