成果概要

誰もが自在に活躍できるアバター共生社会の実現[7] 実社会実証実験

2023年度までの進捗状況

1. 概要

場所、サービス、サイバネティックアバター(CA)開発に関する3つの業種の企業を組み合わせた実証実験が可能な、CAに特化した通信環境を含む実証実験基盤を開発します。2025年大阪・関西万博や、大阪市内、東京都内で大規模かつ実用的な実証実験を実施するため、準量産型CA等も準備します。他の研究開発項目、および複数企業とも企業コンソーシアムを通じて連携し、商業分野を中心に様々な実社会実証実験を実施するとともに、CAの社会実装に取り組みます。本研究開発項目が単体で取り組む領域としては、発達障害者やうつ病患者といった精神障害者を対象としたメンタルヘルスケア、および高齢者を対象とした社会参加、以上の2つについて重点的に実証実験を実施し、CAの実現と課題を明らかにしていきます。

イラスト

2. これまでの主な成果

実証実験基盤構築と商業分野における実社会実証実験

実証実験基盤を活用して、アジア太平洋トレードセンター(ATC、大阪市住之江区)において、CA100体以上による3種類以上の異種CAサービス提供実証実験(アバター100実証実験)を、研究開発項目1・2・4・5と連携して、2023年7月11日から20日の10日間実施しました。この実験では、ATCに設置したCG-CA 60体、設置型CA 37体、移動型CA 7体、合計104体のCAを、ATCと他三か所の遠隔操作拠点(堺市南区、東京都中野区、長崎市布巻町)から操作し、ATCに敷設したローカル5G無線通信等を介して、施設案内、誘導、警備、接客などのCAサービスをATCの来訪者2,000人以上に提供しました。また、実証実験基盤を活用した国境を越える実証として、UAE・ドバイと日本を繋いだ実証実験(ドバイから日本のCAを遠隔操作、日本からドバイのCAを遠隔操作)を実施しました。

アバター100実証実験(アバターまつり)の様子と告知用チラシ
アバター100実証実験(アバターまつり)の様子と告知用チラシ
発達障害者やうつ病患者のメンタルヘルスケアを対象とした実社会実証実験

メンタルヘルスケア領域では、医療・教育現場におけるCA社会実証実験を継続的に実施するとともに、CAを活用した離島での遠隔診療支援の実社会実証実験を実施しました。離島での医療、特に、本土から直接行くことができない二次離島では医療従事者が不足しています。この課題に対して、二次離島の現地医師の診察に専門科医が本土からCAを介して陪席し、現地医師(もしくは看護士)へ助言を行う遠隔診療支援のシステムを構築しました。五島列島の二次離島である久賀島の診療所において精神科医による専門的助言を行う実証実験を実施し、その有効性を確認しました。

高齢者の社会参加を対象とした実社会実証実験

高齢者のCAを通じた社会参加に向けて、CAの遠隔操作という概念の理解と習得を目的として、これまでに開発したCAおよびCA遠隔操作インタフェースを活用し、堺市、大阪経済大学、泉北光明池専門店事業協同組合、南海電気鉄道株式会社と連携し、高齢者を対象としたCG-CAの遠隔操作練習会を月2回のペースで泉北ニュータウン内に設置した実験拠点で実施しました。

CAによる遠隔診療支援実験の様子
CAによる遠隔診療支援実験の様子
実験拠点とCG-CA遠隔操作練習会の様子
実験拠点とCG-CA遠隔操作練習会の様子

企業連携を進めるために設立したアバター共生社会企業コンソーシアムは、会員数が2024年3月末現在で142法人まで成長しました。本企業コンソーシアムの情報会員から、自社事業でのCA利用を検討したい企業を募って立ち上げる分科会は、現在、ヘルスケア・医療分科会、教育支援分科会、ITインフラ分科会、まちづくり分科会、FA分科会、以上の5つが立ち上がり、各会員の事業の蓋然性を高める実証実験の計画を議論しています。

3. 今後の展開

実社会実証実験を継続的に実施していきます。特に、バックキャスティング型実証実験によって社会受容性を検証しつつ、社会実装の方向性を検討します。実社会実証実験の結果を各研究開発項目へフィードバックするとともに、研究開発項目5で実施するCA基盤の構築および国際標準化活動にも反映させます。