成果概要
誰もが自在に活躍できるアバター共生社会の実現[1] 存在感・生命感CAの研究開発
2024年度までの進捗状況
1. 概要
本研究開発項目では、人間並みの外見と機能を有する存在感サイバネティック・アバター(以下CA)や生物らしさをもつ生命感CAを開発することを主たる目的とします。また、存在感CAや生命感CAの拡張として、環境のなかを自在に移動しかつ子どもらしさを備えた移動型CAや、メンタルケアでの使用が想定される抱擁型CAの開発も行います。そして、CAが遠隔操作者の意図・感情・人格といった状態を適切に表出するための自動動作生成システムや、操作者がCAを自在に操作するための高臨場感インターフェースを開発します。
これらの研究開発によって、CAは様々な社会的場面において遠隔操作者の適切な身代わり=アバターとなることができるようになります。そして、これらのCAを遠隔操作することで、私たちは空間的・時間的制約から解放され、様々な時と場所で、CAがなければ実行することのできないような課題を遂行し自在に活躍することができるようになります。
2. これまでの主な成果
① 本人らしい発話を生成する自律対話システムの開発
特定の操作者らしい発話を生成する自律対話システムを開発し、存在感CA「HI-6」(図1)に実装しました。本システムは、RAG(Retrieval Augmented Generation)と呼ばれる技術に基づき、書籍などからデータ化された操作者本人の思考内容をもとに発話を生成することが可能です。操作者がその場に不在であっても、本人の代理として人々と自然に対話することが可能となります。本CAでは発話内容に合わせた表現力豊かなジェスチャーの自動生成機能も実装されており、本人レベルの存在感へとますます近づいています。

② CA操作のゲーミフィケーション
CAの遠隔操作にゲーム要素を取り入れることで、操作者が主体的に操作に関与できるゲーミフィケーション技術を開発しました。具体的には、商業施設に設置されたCAにおいて、通行人を呼び込むなどのタスクを達成することで、操作者が「CA操作ポイント」を獲得できる仕組みを導入しました。さらに、獲得したポイント数に応じて選択可能な操作オプションが増加するインターフェース設計とすることで、「やったこと(実績)」と「できること(選択肢)」の間に好循環が生まれます。この技術により、小学生や高校生のグループが楽しみながらCAを操作する様子が観察されました(図2)。

③ 抱擁型CAによる児童への学習支援
就学前の子どもを対象に、抱擁型CAによる読み聞かせや英語学習支援を実施しました。保育施設やキッズルームにおいて、学習に取り組む子どもの背後に設置されたCAは、会話や接触といったやり取りを通じて子どもの学習意欲を高める役割を果たしました(図3)。保護者を対象としたアンケート調査の結果、CAが子どもたちに心理的な安心感を提供していたことが確認されました。

④ 移動型CA「Yui」の開発
子どものような外見をもつ移動型CA「Yui」を開発しました(図4)。ヘッドマウントディスプレイを通じた操作により、操作者はあたかもCAに「憑依」するかのような感覚をもつことができます。Yuiは操作者の視線、表情、全身の動きと同期し、その人らしい自然な振る舞いを実現します。Yuiは大阪・関西万博のシグネチャーパビリオン「いのちの未来」における実証実験でも活用されます。

⑤ 双方向アバターシステムの開発
操作者の動作を直接CAに反映するシステムを双方向に組み合わせることで、擬似的な対面対話を実現する双方向アバターシステムを開発しました(図5)。これにより遠隔地にいる者同士が、互いの存在感を感じながら身体的インタラクションを伴う対話を行うことができます。

3. 今後の展開
本研究開発項目のもとで開発されるCAは操作者の身代わりとなることで操作者を身体的・空間的・時間的制約から解放しますが、単に人の身代わりとなるCAにとどまらず、人を超える機能や能力をもったCAの開発に挑戦します。私たちはそのようなCAを通すことで、単に異なる場所や時間において働くことができるようになるだけでなく、普段の自分にはできないような能力や振る舞いを発揮して活躍することができるようになります。