成果概要

誰もが自在に活躍できるアバター共生社会の実現1. 存在感・生命感CAの研究開発

2022年度までの進捗状況

1.概要

本研究開発テーマでは、人間並みの外見と機能を有する存在感サイバネティック・アバター(以下CA)や生物らしさをもつ生命感CAを開発することを主たる目的とします。また、存在感CAや生命感CAの拡張として、環境のなかを自在に移動しかつ子どもらしさを備えた移動型CAや、メンタルケアでの使用が想定される抱擁型CAの開発も行います。そして、CAが遠隔操作者の意図・感情・人格といった状態を適切に表出するための自動動作生成システムや、操作者がCAを自在に操作するための高臨場感インターフェースを開発します。
これらの研究開発によって、CAは様々な社会的場面において遠隔操作者の適切な身代わり=アバターとなることができるようになります。そして、これらのCAを遠隔操作することで、私たちは空間的・時間的制約から解放され、様々な時と場所で、CAがなければ実行することのできないような課題を遂行し自在に活躍することができるようになります。

2.2022年度までの成果

  • ① 存在感CAにおいて操作者よりも表現力豊かな身振りを実現
  • ② 現役大臣のCAの開発及び実証実験の実施
  • ③ 無音で動作する生命感CAと、顔面にディスプレイが搭載されたCAの開発
  • ④ 操作者を超える知覚能力の習得

①では、存在感CAが対話相手や対話内容に応じて適切な身振りと表情でもって利用者と交流することができるように、表現力豊かなジェスチャーのデザインを行い、CAに実装しました。CAには流暢で美しい所作が可能となり、とりわけプレゼンテーションのように対話相手へとアピールすることが重要な場面において、CAは操作者本人よりも表現力豊かなでホスピタリティーのある振る舞いができるようになりました(図1)。

図1:存在感CAが操作者本人よりも表現力豊かに身振りをする様子
図1:存在感CAが操作者本人よりも表現力豊かに身振りをする様子

②では、デジタル庁大臣のCAを開発し(図2)、大臣によるCA遠隔操作公務の実証実験を実施しました。大臣は商業施設に設置されたCAを議員会館から遠隔操作し、商業施設での通行人に対してデジタル庁の取り組みについて説明を行う等の公務を行いました。この実証実験では、大臣以外の人物がCAを操作する時間帯も設けられましたが、通行人にアンケートしたところ、多くの人が「大臣以外の人物が操作するCAの発言を大臣本人が言っていることとして受け入れられる」と回答しました。このように著名人によるCA利用の社会受容性について調査が進みました。

図2:デジタル庁大臣のCAと大臣本人
図2:デジタル庁大臣のCAと大臣本人

③では、ロボットの駆動モーターに工夫を施すことでロボットの機構音を無音化し、生物らしい生命感をもったCAを実現しました。無音の生命感CAは、動作音のするCAと比べて高い主体性をもつように感じられることが確認されています。また、顔面にディスプレイが搭載された生命感CAも開発しました。このCAでは自由に顔の表現を変更することができ、豊かな人格表出が可能です。

④では、逆強化学習によって、消毒をお願いするための声かけタイミングをアバターに学習させた結果、普通の人間を超える最適なタイミグで声かけするCAの知覚能力を実現しました。実世界のロボットによる学習機能としては、世界初の研究成果です。操作者の能力拡張を目指す全体目標に貢献しました。

図3:移動型存在感CA
図3:移動型存在感CA
図4:ショッピングモールで消毒をお願いするCA
図4:ショッピングモールで消毒をお願いするCA

3.今後の展開

本研究開発テーマのもとで開発されるCAは操作者の身代わりとなることで操作者を身体的・空間的・時間的制約から解放しますが、単に人の身代わりとなるCAにとどまらず、人を超える機能や能力をもったCAの開発に挑戦します。私たちはそのようなCAを通すことで、単に異なる場所や時間において働くことができるようになるだけでなく、普段の自分にはできないような能力や振る舞いを発揮して活躍することができるようになります。