[高次構造体] 2020年度採択課題

市川 宗厳

繊毛の運動機構の原子レベルでの解明

研究者
市川 宗厳

復旦大学
生命科学学院
テニュアトラックプロフェッサー

研究概要

本研究では、クライオ電子顕微鏡法による高空間分解能の構造解析手法を、プロテオーム解析や構造モデリングなどの手法と組み合わせることで、繊毛の軸糸9+2構造全体の原子モデルを得ます。得られた原子モデルを用いて分子動力学シミュレーションを行うことで、繊毛構造の安定化機構を解明します。さらに、繊毛内部構造の構造変化をリアルタイムで可視化し、繊毛の運動制御機構を原子レベルで明らかにすることを目指します。

岩崎 由香

ヘテロクロマチン形成高次構造体の解明と制御

研究者
岩崎 由香

理化学研究所
生命医科学研究センター
チームリーダー

研究概要

ヘテロクロマチンは、ゲノムの安定性維持や機能発現に重要な役割を果たし、その形成不全が様々な疾患の原因となります。本研究は、小分子RNAを介したヘテロクロマチン形成に着目し、これがゲノム三次元構造や核内配置、LLPSによる空間的な構造体を形成する可能性を検討すると同時に、形成過程を時系列での理解に取り組みます。さらに、人工的な小分子RNAの発現を介したヘテロクロマチン形成の制御を目指します。

梅田 健一

高速AFMを用いたSMC複合体の力学機構の解明

研究者
梅田 健一

金沢大学
ナノ生命科学研究所
特任助教

研究概要

近年、DNA凝縮や姉妹染色分体の接着過程において、染色体構造維持(SMC)タンパク質の液-液相分離現象が重要な役目を担うことが明らかになりつつありますが、そのサブ分子レベルでの形成・破壊原理は未知の領域となっています。本研究では、高速原子間力顕微鏡(AFM)に光ピンセットを組み合わせた新規手法を用いて、SMCのトポロジカル結合や液-液相分離の形成・破壊ダイナミクス可視化・原理解明を行います。

大塚 洋一

ピコ流体質量分析イメージングによる生細胞のがん化の理解

研究者
大塚 洋一

大阪大学
大学院理学研究科
准教授

研究概要

細胞の生命活動の本質を理解するためには、生細胞まるごとに含まれる化学種を多次元情報として計測・解析し、そこから生化学的意義を理解するというアプローチが重要となります。本研究ではピコ液体を活用する質量分析イメージング技術を開発し、生細胞中の分子環境を、具体的な化学成分の量や種類の変化に基づいて調べます。がん細胞の脂質や代謝物、タンパク質などの変化を探り、細胞の不均一化との関連性を解明していきます。

梶本 真司

細胞内の水を用いた細胞内微小環境の定量評価法の確立と応用

研究者
梶本 真司

東北大学
大学院薬学研究科
准教授

研究概要

細胞内に豊富に存在する水分子を用いて、細胞内の様々な物理量をラベルフリーで同時に定量評価する手法を確立し、細胞内で起こる生理現象を解明します。特に、液液相分離など細胞内環境の局所的な変化を伴う生理現象について、分子間相互作用や分子構造といった分子レベルの変化から、局所的な密度や構造の変化、さらには温度や固さといったマクロな物理量の変化を同時に定量的に可視化することで、階層網羅的に明らかにします。

小杉 貴洋

タンパク質複合体を合理的に改造し、細胞内機能を理解・制御する

研究者
小杉 貴洋

自然科学研究機構
分子科学研究所
助教

研究概要

細胞内では様々なタンパク質複合体が重要な働きをしています。本研究では、機能を合理的に制御した様々な改造タンパク質複合体を創り出し、それらを細胞内に戻すことで起こる変化を観察することで、細胞内でのタンパク質複合体の機能を理解することを目指します。さらに、そこで得られた理解を基にして、改造タンパク質複合体を用いた細胞制御技術の開発も行います。

小林 穂高

RISCの機能発現を1分子mRNAレベルで「見る・操る」

研究者
小林 穂高

徳島大学
先端酵素学研究所
准教授

研究概要

Non-coding RNAの代表格であるmicroRNAは、動的高次構造体「RISC」を形成することで、膨大な種類のmRNAの発現を制御します。本研究では、RISCの機能発現を1分子mRNAレベルで「見る・操る」ための独自技術を開発することで、RISCが「いつ・どこで」機能するのか突き止めます。これにより、多彩な生命現象を司るRISCについて、機能発現の普遍的メカニズムに迫ります。

立川 正志

ミトコンドリア形態の包括的数理モデリング

研究者
立川 正志

横浜市立大学
国際総合科学群(理学部)
准教授

研究概要

ミトコンドリアは内外二層の膜からなり複雑な形態を持つ細胞内小器官で、エネルギー変換やアポトーシスなど重要な細胞機能を担っています。ミトコンドリアの形態はその機能と強く関わっていると考えられていますが、その原理は解明されていません。本研究では、内外膜にかかる力のバランスと機能分子の運動に基づいて、形態を制御する方程式を構成し、解くことで、ミトコンドリア形態の制御原理の解明を目指します。

谷本 博一

細胞内構造の実験力学

研究者
谷本 博一

横浜市立大学
理学部
准教授

研究概要

本研究は、代表的な細胞骨格である微小管とアクチンが細胞内で示す力学特性を精密に測定することで、細胞内の空間秩序生成および細胞の動的な形状決定という細胞生物学の中心的な現象の物理的設計原理を明らかにすることを目指します。

土谷 正樹

ゲノムレベルで細胞内脂質ダイナミクスを解明するラベル化戦略

研究者
土谷 正樹

静岡県立大学
薬学部
准教授

研究概要

細胞の膜は脂質分子が動き回り集まって出来た構造体です。細胞内での脂質の挙動はタンパク質により制御されます。しかし、生細胞の活動のなかで脂質を高時空間分解能で計測する事、また脂質の制御因子を同定する事は困難です。そこで本研究では細胞内局所的な分子ラベル化法を用いて脂質動態を定量的に捉える細胞測定技術を構築します。さらに網羅的な遺伝子探索法と融合させ、脂質動態の遺伝子基盤を解明する新技術を創出します。

西原 諒

発光反応場を構成するペプチドプローブ開発

研究者
西原 諒

産業技術総合研究所
健康医工学研究部門
主任研究員

研究概要

本研究は、生物発光反応に関与する非発光生物由来タンパク質のアミノ酸配列を基に、ルシフェラーゼ機能を持つペプチドプローブを開発します。更に、合理的に設計合成したルシフェリンと組み合わせることで、発光強度と発光色を調節し、細胞内タンパク質の動的構造変化をも捉える新規生物発光イメージングの基礎基盤技術を開発します。

西村 多喜

動的なオルガネラコンタクトネットワーク制御機構の解明

研究者
西村 多喜

科学技術振興機構
さきがけ研究者

研究概要

オルガネラコンタクトサイト研究のボトルネックは解析ツールが限られていることにあります。そこで本研究ではコンタクトサイト可視化と細胞内脂質可視化に有用なツールの開発に取り組みます。可逆的なsplit蛍光プローブを利用し、生理的条件下におけるコンタクトサイトの検出プローブを作製すると共に、膜脂質を特異的に認識するツールのオンデマンド作製実現に向けた、脂質プローブ作製のストラテジー確立を目指します。

宮﨑 牧人

アクチン細胞骨格動態の構成的理解と制御

研究者
宮﨑 牧人

理化学研究所
生命機能科学研究センター
チームリーダー

研究概要

アクチン細胞骨格は動物細胞に普遍的に存在する動的高次構造体であり、細胞骨格の構造転移が細胞の形態転移を引き起こし、細胞運動や分裂、極性形成など生命に本質的な機能を生み出しています。本研究ではアクチン細胞骨格が多様な細胞機能を駆動する仕組みを、独自の再構成システムを用いて体系的に理解することを目指します。本研究を通じて、アクチン細胞骨格が司る細胞機能を自在に操る基盤技術が確立できると期待されます。

吉田 大和

オルガネラ分裂リングの分子動作機序の解明

研究者
吉田 大和

東京大学
大学院理学系研究科
准教授

研究概要

ミトコンドリアや葉緑体といった膜型オルガネラは、”オルガネラ分裂リング”と呼ばれる細胞内の動的高次構造体によって分断されることで数を増やすことが出来ます。「オルガネラ分裂リングの分子動作機序」を明らかにし、また「オルガネラの分裂増殖に機能する全遺伝子」の機能を理解することによって、真核生物が永続的なオルガネラの維持を可能とした普遍的なオルガネラ創成原理の解明を目指します。

柳川 正隆

多色1分子計測によるGPCRシグナロソームの動態解明

研究者
柳川 正隆

東北大学
大学院薬学研究科
准教授

研究概要

GPCRは細胞内で様々な分子と高次構造体(シグナロソーム)を形成し、複数のシグナル伝達経路を制御する薬の受容体です。近年、薬に応じてGPCRが経路選択的活性を生むことを利用し、副作用の低い薬が開発されています。しかし、経路選択が生じるメカニズムは明らかではありません。本研究では、多色同時1分子蛍光顕微鏡を開発し、薬刺激に伴うGPCRシグナロソームの動態変化を観察、経路選択の分子機序を解明します。

横山 武司

リボソームの動的分子構造と細胞内分布の統合的理解

研究者
横山 武司

東北大学
大学院生命科学研究科
助教

研究概要

生命を維持する細胞内のシステムは、多彩な分子機械が協調的に働くことで維持されています。本研究課題では、タンパク質合成を司る翻訳マシナリーに着目し、細胞内での分布と動的な構造を同時に捉えることで、その統合的理解を目指します。RNAエンジニアリング技術を駆使して、特定の遺伝子を翻訳するリボソームの細胞内の座標を特定する新技術を開発し、「翻訳の現場」を高分解能で可視化します。

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