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- 電子やイオン等の能動的制御と反応
本研究領域では、電気や光などを用いて電子やイオンの能動的な制御を狙い、革新的な化学反応技術を創出することを目的とします。これによって、従来にない物質生産プロセスを実現させ、既存技術における反応制御の難しさ、収率や選択性の低さ、高い反応温度、平衡制約などから脱却できる新たな化学反応の体系を確立することを狙います。
具体的には、電気化学や光化学、非在来型プロセスなどを単独あるいは組み合わせることにより、電子やイオンを能動的に制御し、これによって化学反応の選択性向上、平衡制約からの脱却といった次世代反応場の開拓を狙います。高効率な物質合成に資する化学反応プロセスのみならず、反応プロセスを構築するための新規材料開発、例えば従来にない中温域で作動しうる新規イオン伝導材料の開発やこれら反応・材料の新規評価方法の確立、そのために必要となる理論化学の援用によるモデル化と実験系へのフィードバックなども研究対象に含めます。
化学(電気や光など)、反応プロセス(フローリアクターなど)、材料(電極材料、固体イオニクス材料、触媒など)、計測、理論の融合からなる次世代反応プロセスの創出により、持続可能な社会の実現を目指します。
「戦略的創造研究推進事業(社会技術研究開発及び先端的低炭素化開発を除く。) の実施に関する規則」における「第4章 事業の評価」の規定内容に沿って実施した。
(1)天野 史章(北九州市立大学 国際環境工学部 准教授)
電解還元法による酸素酸化反応プロセスの構築
(2)アルブレヒト 建(九州大学 先導物質化学研究所 准教授)
電界による能動的軌道変形を利用した化学反応技術の創出
(3)稲木 信介(東京工業大学 物質理工学院 准教授)
外部電場により駆動するワイヤレス電解反応システムの構築
(4)数間 恵弥子(理化学研究所 開拓研究本部 研究員)
分子‐金属界面の構造制御に基づくプラズモン誘起化学反応の制御
(5)亀山 達矢(名古屋大学 大学院工学研究科 准教授)
量子分割によるヘテロ接合ナノ粒子光触媒の超高効率化
(6)北野 政明(東京工業大学 元素戦略研究センター 准教授)
ヒドリドイオンの光励起により駆動するアンモニア合成触媒の開発
(7)鈴木 康介(東京大学 大学院工学系研究科 准教授)
金属酸化物クラスターによる多電子・プロトン移動触媒の創製
(8)髙橋 康史(金沢大学 ナノ生命科学研究所 教授)
ナノスケールの電気化学イメージング技術の創成
(9)田中 淳皓(近畿大学 理工学部 講師)
光照射波長によって電子移動・化学選択性が変化するプラズモニック光触媒の創製と物質変換反応
(10)平井 健二(北海道大学 電子科学研究所 准教授)
ラビ分裂による化学反応操作法の確立
(11)古山 渓行(金沢大学 理工研究域 准教授)
光触媒の能動的制御による近赤外光合成プロセスの開発
2022年1月9日(日曜日) 事後評価会開催
関根 泰 | 早稲田大学 理工学術院 教授 |
雨澤 浩史 | 東北大学 多元物質科学研究所 教授 |
五十嵐 達也 | 富士フイルムホールディングス(株) CTO室 統括マネジャー |
佐藤 康司 | ENEOS(株) 先端技術研究所 所長 |
佐藤 縁 | 産業技術総合研究所 省エネルギー研究部門 総括研究主幹 |
里川 重夫 | 成蹊大学 理工学部 教授 |
杉本 渉 | 信州大学 繊維学部/先鋭材料研究所 卓越教授 |
堂坂 健児 | 本田技研工業(株) 日本本部地域事業企画部 課長 |
中井 浩巳 | 早稲田大学 理工学術院 教授 |
中林 亮 | 旭化成(株) 研究開発本部繊維技術開発センター センター長 |
濱川 聡 | 産業技術総合研究所 材料・化学領域 領域長 |
山下 弘巳 | 大阪大学 大学院工学研究科 教授 |
吉田 朋子 | 大阪市立大学 人工光合成研究センター 教授/副センター長 |
柳 日馨 | 大阪府立大学 研究推進機構 特認教授 |
和田 雄二 | 東京工業大学 科学技術創成研究院 特任教授 |
該当なし |
2018年度に、本研究領域は電気や光などを用いて電子やイオンの能動的な制御を狙い、革新的な化学反応技術を創出することを目的に発足した。化学分野における幅広い専門領域の数多くの提案の中から、化学反応を外部からの波長制御、電位制御などによって、能動的に制御できる新たな反応ルートを開拓し高い選択性と収率を目指した提案、また、走査型プローブ顕微鏡等の計測・解析に関する提案、電気や光などによる新しい反応を用いて、能動的に制御された化学プロセスの実現、ならびに電子やイオンの動きを制御するために必要な新たな材料群の提案、さらに、物理現象を化学反応に適応しようと新規性、独創性に富んだ画期的な提案を採択した。
11名の1期生に対して、その専門分野に詳しい領域アドバイザーがメンターとなり、サイトビジット等を通じて、親身になって伴走しながら議論を深めた。
2019年度には、春と秋に2泊3日で領域会議を開催し、総括、領域アドバイザー、研究者が一堂に会して、対面で研究進捗報告と質疑応答を行うとともに、さきがけらしく深夜まで膝詰めで議論を交わし、お互いの考えを理解、共感し合いながら親交を深めた。また、領域会議に合わせて、企業アドバイザーの工場や研究所の現場(富士フイルム(株)吉田南事業所、ENEOS(株)中央技術研究所)の設備のすぐそばまで近づいて説明を聞き、最新技術の凄さを体感し、社会実装に向けた具体的イメージを持つ一助となった。
2020年度からコロナ禍となり、対面での領域会議が開催できなくなったが、直後の2020年5月には、JST・触媒学会共催でオンライン公開シンポジウム「革新的触媒と反応制御の今後」というタイトルで開催し、参加者745名を得て、コロナ禍でも活発な議論ができることを示した。また、総括・アドバイザーと研究者間でもオンラインで活発にディスカッションを進めた。併せて研究者間の人的ネットワーク形成と議論深化のために、1期生から3期生の研究者数名でのチーム活動を定期的に行い、その活動を通じて、数多くの領域内共同研究が実施され、最終的には共著論文などの形として結実した。
2021年度の最終年度には、コロナ禍でも活発にディスカッションし、研究者間の人的ネットワークをさらに強固にするために、毎月オンラインにて「反応制御カフェ」という名称で、1期生から3期生の研究者3名とそのメンターの領域アドバイザーで集まり、研究等について座談会形式で自由に語り合い、各人の研究発表も行って、これらをすべてYouTubeにライブ配信することにより学生等若手の研究者にもさきがけ研究の面白さなどを伝え、その結果これを見て博士進学を決意した学生も出てきた。
また、2022年1月には、1期生の研究成果発表会をオンライン公開シンポジウムで「反応制御でエネルギーと環境の未来を拓く~さきがけ若手研究者たちの挑戦~」というタイトルで実施し、参加登録者452名を得て、成果発表と活発な質疑応答の場となった。
SciFoS(Science for Society)活動にも研究者有志が参加して、自分の研究成果を企業技術者に説明し、議論を通じて、社会にどのように役立つか肌で感じ取ることができた。
その結果、101件の国際論文発表、31件の国際招待講演を行い、また、積極的に研究成果のプレスリリース (JSTから7件) も進め、多くの新聞等に掲載された。
また、科学技術分野の文部科学大臣表彰若手科学者賞を3名が受賞した。さらに、11名のうち7名がさきがけに採択されたのをきっかけに昇任し、また、さきがけ研究終了後、創発的研究支援事業に4名が採択された。
本さきがけを通じて、研究者個人の成長は著しく、さらに、強固な人的ネットワークが構築し、さきがけ後にもこの関係性が維持されて、2050年カーボンニュートラルに向け、この分野の発展に大きく貢献していくリーダーとして大いに活躍していくことが期待される。
※所属・役職は研究終了時点のものです。