高原ソフト界面プロジェクト

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研究総括 高原 淳
(九州大学 先導物質化学研究所 教授)
研究期間:2008年~2013年

 

 

ソフトマテリアルの階層構造には界面および表面(ソフト界面)が必ず含まれます。このソフト界面は、有限の厚みと動的特性、能動的な機能を有していることが特徴です。ソフトマテリアルの電気・電子物性、生体適合性、摩擦、接着、防汚性などの重要な機能の多くが、界面の構造と物性に大きく支配されていることが明らかになりつつあります。つまり、ソフトマテリアルの特性を最大限に発揮させるためには、ソフト界面の構造と物性を意のままに操ることが必要不可欠です。

本プロジェクトでは、ソフト界面の本質の理解と、高性能ソフト界面構築のための普遍的原理の確立を目的としました。ソフト界面の階層構造と動的特性の系統的かつ基礎的な研究成果は、この分野の基礎科学と工学的応用の発展に資する成果です。ソフト界面の設計・制御指針の確立と高機能ソフトマテリアルの創成についての研究成果は、戦略目標「異種材料・異種物質状態間の高機能接合界面を実現する革新的ナノ界面技術の創出とその応用」に資するものです。

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研究成果集

界面分子設計グループ

精密高分子合成技術を駆使し、ソフトマテリアルの基本的な要素(化学構造・分子量・分子量分布・分岐構造などの一次構造)が明確で、表面・界面構造・特性解析のモデルとなるソフト界面を設計・調製した。イオン性官能基を含む高分子鎖が基材表面に共有結合で固定化された薄膜(高分子電解質ブラシ)を調製し、その水界面における分子形態・物性・ダイナミクスと塩濃度依存性を評価することで、生体材料の多様な機能発現メカニズムの本質に迫る研究を展開した。他方、海洋付着生物の接着タンパクの成分に着目し、水中環境においても接着作用を発現する高分子材料、および海洋生物が付着しない耐汚損性に優れた材料を創成した。本プロジェクトで解明された、電解質高分子界面における動的特性や水の構造に関する知見、接着性、低付着性高分子の発想と基本特許により、高分子電解質に関する学術領域の発展、および工業的応用展開が期待される。

成果を代表する論文

  1. M. Kobayashi, Y. Terayama, M. Kikuchi, A. Takahara, ” Chain dimensions and surface characterization of superhydrophilic polymer brushes with zwitterion side groups”, Soft Matter, 9(21), 5138-5148 (2013).
  2. J. Nishida, M. Kobayashi, A. Takahara, “Light-Triggered Adhesion of Water-Soluble Polymers with a Caged Catechol Group”, ACS Macro Lett., 2, 112-115 (2013).

 

階層構造制御グループ

ナノインプリント法やナノロッドアレイ形成技術を駆使して自然界の階層的な微細構造を備えたソフト界面の形態を模倣し、その大きさや形態・力学物性の制御による表面・界面特性の解明を目的とした。階層構造性の付与により安定化された微粒子安定化液体「液体ビー玉」について、その表面化学的な特性を明らかにすると共に、新たな微小液滴輸送手法としての可能性についても提案した。計算機シミュレーションを行うことにより、ポリマーブラシの面内相分離構造にについて熱力学的な考察を行い、界面への分子鎖固定による新たな機能性ソフト界面を構築した。

成果を代表する論文

  1. H. Watanabe, A. Fujimoto, R. Yamamoto, Y. Tsuchiya, T. Toriyama, J. Nishida, M. Kobayashi, H. Jinnai, A. Takahara, “Scaffold for Growing Dense Polymer Brushes from a Versatile Substrate”, ACS Appl. Mater. Interfaces, 6(5), 3648-3653 (2014)
  2. D. Matsukuma, H. Watanabe, H. Yamaguchi, A. Takahara, “Preparation of Low-Surface-Energy Poly[2-(perfluorooctyl)ethyl acrylate] Microparticles and Its Application to Liquid Marble Formation”, Langmuir 27, 1269-1274 (2011).
  3. Y. Norizoe, H. Jinnai, A. Takahara, “Molecular simulation of 2-dimensional microphase separation of single-component homopolymers grafted onto a planar substrate”, Europhys. Lett. 101, 16006-p1 – 16006-p6 (2013)

 

先端界面構造物性解析グループ

ソフト界面の諸特性・ダイナミクスを”その場”評価する一連の新規装置群の試作・製作し、本プロジェクトで開発する新規ソフト界面のキャラクタリゼーションを行うことで、ソフト界面で生じている現象や機構の解明を目指した。ソフト界面の構造・分子運動特性は表面機能特性と密接に関連していることから、ソフト界面の分子運動特性を評価する実験装置として微小視斜角入射X線光子相関分光測定(XPCS)装置を大型放射光施設SPring8の実験ハッチに導入し、実験した。水界面でのソフト界面のダイナミクスの評価のため、高強度パルス中性子源に最適化した飛行時間型の検出器を具備した中性子反射率計を設計・試作し、大強度陽子加速器施設J-PARCへ設置し、実験を行った。さらに、ソフト界面の基本的な特性を明らかにするために、摩擦・付着力・接触角などを精密に測定する装置、ソフト界面を可視化するための新規顕微鏡技術も構築した。

成果を代表する論文

  1. T. Hoshino, D. Murakami, Y. Tanaka, M. Takata, H. Jinnai, A. Takahara. “Dynamical crossover between hyperdiffusion and subdiffusion of polymer-grafted nanoparticles in a polymer matrix”, Phys. Rev. E, 88(3), 032602 (2013)
  2. K. Mitamura, N. L. Yamada, H. Sagehashi, N. Torikai, H. Arita, M. Terada, M. Kobayashi, S. Sato, H. Seto, S. Gokou, M. Furusaka, T. Oda, M. Hino, H. Jinnai, A. Takahara, “Novel neutron reflectometer SOFIA at J-PARC/MLF for in-situ soft-interface characterization”, Polym. J., 45, 100-108 (2013)
  3. D. Murakami, M. Kobayashi, T. Moriwaki, Y. Ikemoto, H. Jinnai, A. Takahara, “Spreading and Structuring of Water on Superhydrophilic Polyelectrolyte Brush Surfaces”, Langmuir, 29, 1148-1151 (2013)

 

研究成果

評価・追跡調査

プログラム

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