中村不均一結晶プロジェクト

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総括責任者 中村 修二
(カリフォルニア大学サンタバーバラ校 教授)
研究期間:2001年10月~2006年9月

 

中村不均一結晶プロジェクトでは、窒化物半導体の特殊性である「不均一性」に着目して研究を遂行してきた。そのアプローチは一方で均一な完全結晶であるバルク成長を行うと共に、もう一方で不均一性を意図的に利用することによりデバイスの性能を高めようとするものである。

バルク成長を行うバルクグループにおいては、アンモノサーマル法によるGaNバルク成長の実用性を示し、世界トップレベルの成長技術を確立した。またAlNでは物理的気相輸送法(PVT法)やハイドライド気相成長法(HVPE法)により、従来のc面上の成長で低欠陥の結晶作製に成功した。さらに、本プロジェクト開始後に重要性が着目された非極性、半極性GaN成長では、世界に先駆けてHVPE法によりa面、m面、各種半極性面上への低転位成長を実現した。

薄膜成長とデバイス作製を行う薄膜グループでは、各種非極性、半極性基板上に発光ダイオードを作製し、内部分極の悪影響を低減した画期的なデバイスの作製に成功した。また、MOCVDのシミュレーションを活用して、薄膜成長条件の最適化を行った。さらに、GaN結晶の特徴を利用することにより、GaNによる水素発生技術を発明した。

評価グループでは、作製された不均一結晶薄膜を詳細に調査することにより、InGaN系発光ダイオードにおける発光メカニズムを解明すると共に(図1)、非極性、半極性デバイスからの発光ダイナミクスも明らかにした。

プロジェクトを横断して研究された非極性、半極性GaNは近年の窒化物半導体研究における一つの流れを形成するに至った。標準的なサイズ(300μm x 300μm)と動作電流(20mA)で、新しい非極性LEDは、最大41%の外部量子効率と25mWの放射パワーを示した。同様に標準的なチップサイズと動作電流(20mA)で、半極性LEDは、最大30%の外部量子効率と18mWの放射パワーを示した。 また、66%の外部量子効率の c-面LEDを達成した。この LED は116 lm/W の視感効率 -白熱電球と蛍光灯の両方より効率的である- を誇る白色LEDランプを作るために使われる。[2006年12月13日UCSBプレス発表]  さらに、非極性窒化ガリウム( GaN )半導体でレーザー発振を達成し、世界で最初の非極性青紫色レーザーダイオードを実現した。 [2007年1月29日UCSBプレス発表]

またバルクグループにおいて開発されたアンモノサーマル法GaNバルク成長とHVPE法非極性、半極性GaN成長はそれぞれベンチャー企業を創出し、今後の産業への貢献が期待される。またGaNを用いた水素発生は環境問題に敏感な一般社会に大きな反響を与え、評価グループが発表したInGaN発光ダイオードの発光機構はネイチャーマテリアルズ誌に掲載され高い学術的評価を得た。

本プロジェクトより発表された論文は129件、学会発表は221件、基調講演は10件、そして特許出願は35件に及んだ。

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図1. 局在励起子の微視的モデル

 

研究成果

評価・追跡調査

プログラム

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