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- 野依分子触媒プロジェクト
総括責任者 野依 良治
(名古屋大学 理学部 教授)
研究期間:1991年10月~1996年9月
物質の性質や機能はその構成分子の純度に重大な影響を受けます。したがって、キラリティを含めあらゆる観点から同一の化合物を純粋に合成することはすぐれた物質の創製の基本であります。このプロジェクトでは完全化学反応の実現にむけた分子触媒の開発を目指しました。
その結果、多くの有機化合物の完全水素化反応に有効な力量ある不斉ルテニウム触媒の開発に成功し、生理活性物質や機能性材料の合成に必要な光学活性化合物の革新的合成技術を確立しました。さらに分子触媒の概念を高分子合成に展開して重合反応を完全に制御することができました。また、超臨界流体を反応触媒とする高速かつ高生産性の分子触媒応を開拓して、新たな化学技術の萌芽を提示しました。
これらの研究成果は、分子触媒反応が次世代の化学技術の基幹となり得ることを明確に示すものです。
超臨界状態の二酸化炭素がルテニウム(Ⅱ)錯体触媒により高速で水素化され、ギ酸およびギ酸メチルやDMFなどのギ酸誘導体を効率よく生成することを見いだした。
超臨界状態の二酸化炭素やフロンがある種のオレフィン類の不斉水素化反応の触媒として有望であることを見出した。
適切な構造をもつホスフィンと1,2-ジアミン配位子を有するルテニウム(Ⅱ)錯体を用いて種々のケトン類を立体選択的に水素化することができる。不斉配位子の活用により単純ケトン類から高い光学純度の第二級アルコール類を簡便に合成する方法を確立した。
カルボニル化合物を選択的かつ高速で水素化するホスフィンと1,2-ジアミンの混合配位子をもつルテニウム(Ⅱ)錯体触媒を考案した。分子内にオレフィ ン結合をもつカルボニル化合物を定量的に不飽和アルコールに変換することができる。金属水素化物還元法に代わるきわめて有効な水素化法が実現したことにな る。
光学活性1,2-ジアミン誘導体を配位子とするアレーンルテニウム(Ⅱ)錯体触媒を設計し、2-プロパノールやギ酸を水素源とするケトン類やイミン類の高選択的不斉還元に成功した。広範囲にわたる高い光学純度の光学活性アルコールやアミンが簡便に合成できる。
ホスフィンとジエン配位子をもつ有機ロジウム(Ⅰ)錯体がフェニルアセチレン類の立体特異的リビング重合の開始剤として有効であることを見出した。分子長のそろった筒状高分子化合物を合成することができる。
▲分子触媒
▲らせん構造をもつフェニルアセチレン重合体