領域紹介

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研究領域の紹介

さきがけ「慢性炎症」研究領域のご紹介

戦略目標

「炎症の慢性化機構の解明に基づく、がん・動脈硬化性疾患・自己免疫疾患等の予防・診断・治療等の医療基盤技術の創出」

研究領域

「炎症の慢性化機構の解明と制御」

領域概要

 本研究領域は、生体防御反応であるにもかかわらず、炎症が慢性化することによって生体に悪影響を引き起こす現象の実体解明に向けた研究、すなわち、炎症の慢性化とその維持機構、および炎症の慢性化が疾患を惹起・進行・重症化する機構の時空間的な解明に挑戦する研究を対象とします。このような研究を推進することにより、炎症の慢性化が関与するさまざまな疾患や臓器不全の予防や治療、創薬につながる新たな医療基盤の創出を目指します。

 具体的には、下記の視点をもった研究を推進します。
1) 分子や細胞の階層から迫る研究に加え、組織や臓器の階層から迫る視点
2) 細胞や組織、臓器間の相互作用、個体全体でのダイナミクスなど、慢性炎症を複雑系として捉える視点
3) エピジェネティクスや機能性非コードRNAなど、他生命科学分野からの視点
4) 遺伝子産物、生理活性物質、細胞やそれらの動態を検出・測定する技術的な分野からの視点
5) 慢性炎症の制御による関連疾患を標的とした創薬などの医療応用を見据えた視点

研究総括の募集・選考・研究領域運営に当たっての方針

 21世紀に入り高齢化社会における健康保持とそのための医学的ニーズが強くなっています。そのような中で、医学全般の分野では「炎症の慢性化」への注目が高まっています。それは、慢性炎症が、加齢とともに増加する「がん、生活習慣病、アルツハイマー病など」種々の疾患に促進的要因として関与することが示唆されているからです。炎症は外的環境要因(感染病原体、環境錯乱物質、生活環境など)や内的環境要因(加齢、栄養、ストレス、代謝など)に対する生体の防御反応であると認識されています。しかし、近年、種々の疾患(がん、アルツハイマー病などの神経変性疾患、糖尿病、動脈硬化性疾患、自己免疫疾患など)の局所において炎症細胞の浸潤と慢性的な炎症が観察され、それが組織変性と疾患の重症化の重要な要因となっていることがわかってきました。

 ところが、炎症の慢性化がどのような機序で組織変性や疾患の重症化をひきおこすのか、なぜ、通常では消退するはずの炎症反応が持続し慢性化するのかについては不明な点が多いのが実状です。また、生体の高次機能は免疫系-神経系-内分泌系などのネットワークを介した複雑系により成り立っています。そのため、これらの時空間的な調節と炎症の慢性化との関連性を解明することも重要です。もし、それらのことを明らかにできれば、加齢に伴う種々の疾患の予防、診断、治療、創薬開発が可能になり、高齢化社会に必要な先制医療の基盤技術の創出に大きく資することになります。

 本研究領域では、炎症制御の破綻が炎症の慢性化につながる機構及び炎症の慢性化が組織変性や疾患を惹起・進行・重症化する機構に関する研究、ならびにそれら機構の時空間的な制御の研究を対象とします。また、複雑系とされる慢性炎症の機構を理解するには、多面的な視点や考え方が必要ではないかと思います。そこで、本研究領域では「炎症の慢性化」という切り口で臨床医学、基礎医学、基礎生物学を含めたさまざまな分野からの研究課題を結集し、研究者の方々には自身の研究課題に新たな視点を取り入れるために、研究者間での活発な交流や連携を求めていきたいと思います。なお、今回、同じ戦略目標の達成に向けてCREST「炎症の慢性化機構の解明と制御に向けた基盤技術の創出」もスタートします。CREST領域とも積極的に連携し、さきがけ・CRESTの場に集まった人達が一体となって、慢性炎症の機序の解明などに向けて進んでいければと思っております。

The 5 Cardinal Signs of Inflammation