領域紹介

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研究領域の紹介

CREST「慢性炎症」研究領域のご紹介

戦略目標

「炎症の慢性化機構の解明に基づく、がん・動脈硬化性疾患・自己免疫疾患等の予防・診断・治療等の医療基盤技術の創出」

研究領域

「炎症の慢性化機構の解明と制御に向けた基盤技術の創出」

領域概要

 国の科学技術政策や社会的・経済的ニーズを踏まえ、社会的インパクトの大きい目標を達成するために、文部科学省は戦略目標を設定します。本研究領域は、H22年度に設定された戦略目標「炎症の慢性化機構の解明に基づく、がん・動脈硬化性疾患・自己免疫疾患等の予防・診断・治療等の医療基盤技術の創出」をもとに、課題解決型基礎研究を推進するものです。

 本研究領域では、炎症が慢性化する機構を明らかにし、慢性炎症を早期に検出し、制御し、消退させ、修復する基盤技術の創出を目的とします。
 具体的には、①炎症制御の破綻機構を明らかにすることにより、炎症の慢性化を誘導、維持する因子を同定する、②炎症の慢性化によりどのようにして特定の疾患(がん、神経変性疾患、動脈硬化性疾患などを含む)が発症するのか、その機序を明らかにし、制御する基盤技術を創出する、③炎症の慢性化の早期発見および定量的な評価を可能にする基盤技術を創出する、などを目指した研究を対象とします。なかでも、従来の基礎のみ、あるいは臨床のみの研究ではなく、十分なエビデンスに基づいた知見を高次炎症調節機構の理解にまで昇華させ、新たな先制医療基盤技術の開発につなげられるような視点をもつ研究を重視します。

研究総括の募集・選考・研究領域運営に当たっての方針

 炎症とは、赤み、熱、腫れ、痛みを主徴とした反応で、感染や組織傷害に対して生体が発動する組織修復機構と考えられてきました。ところが、加齢とともに増加するがん、動脈硬化、肥満、アルツハイマー病などの種々の疾患のみならず、老化そのものにも、慢性的な炎症が促進的要因として関与することが強く示唆されています。では、なぜ、通常では消退するはずの炎症反応が持続し、慢性化するのでしょうか?また、慢性的な炎症がどのような機序で組織に変性をもたらし、さらには種々の疾患をひきおこすのでしょうか?これらについては殆どわかっていません。一方、もし、これらのことを明らかにすることができれば、加齢に伴う種々の疾患の予防、制御が可能になり、病気が始まってから治療をするのではなく、その発症に先立ち診断、対処ができる「高齢社会に必要な先制医療」の礎を築くことができます。21世紀初頭には我が国は世界のどの国も経験したことのない高齢社会となることが予想されていますが、このような先制医療の礎を築くことにより、国民が健やかに老いることが可能になり、等しく健康で長寿を全うできる社会の形成に大きく資することになります。また、これまでの慢性炎症に対する治療法は、ステロイドや免疫抑制剤などを用いた非特異的なものであったために、日和見感染症の誘発などの問題点が生じていますが、もし慢性炎症の誘導、増悪機構を明らかにできれば、これを標的としたより特異的な治療法の開発が可能になります。
 炎症は、急性炎症と慢性炎症に大別されます。急性炎症の発症、制御機構は、近年の免疫学の進歩とともに、かなりその詳細が明らかになってきました。しかし、慢性炎症は単なる急性炎症の繰り返しではなく、質的に異なる反応である可能性があります。そうであれば、急性炎症の機構だけを調べても慢性炎症を理解することは難しいと考えられます。炎症制御の破綻が炎症の慢性化、さらには種々の疾患の発症につながると想定されてはいるものの、具体的にどのような因子が慢性炎症をひきおこし、その遷延化を誘導するのかは明らかではありません。また、既に同定されている炎症誘導因子の機能的な制御で炎症の慢性化が抑制できるのかについても明らかではありません。おそらく、複数あるいは多数の因子が時空間的に複雑な相互作用をする動的な反応の存在が想定されます。

 本領域では、炎症の慢性化機構や慢性炎症を消退させる制御機構を明らかにする研究のみならず、慢性炎症が原因となる疾患の発症機構を明らかにする研究や、炎症の実態を可視化、定性化、定量化するための技術的な開発も重要視します。特に、個別分子、個別疾患、個別技術の研究にとどまらない、新たな慢性炎症の制御技術の開発や、慢性炎症を契機とした疾患発症機序の解明と制御を目指した挑戦的な研究提案を期待します。

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