IoE社会のエネルギーシステム テーマA

研究開発項目:C
「IoE応用・実用化研究開発」

  • 担当サブPD
    庄木 裕樹
    株式会社 東芝 研究開発本部研究開発センター
    ワイヤレスシステムラボラトリー 上席エキスパート

研究開発の背景・目標

「Society5.0」(超スマート社会)での要求として、「世界一安全・安心で世界一健康な社会であること」、「あらゆるものに効率的・効果的に電力供給を行うE2E(Energy to Everything)が実現できること」、「二酸化炭素排出が削減できること」、「電力・社会インフラが強靭化、ライフラインが安定化できること」などがあげられます。 これらの要求に対して、ワイヤレス電力伝送(WPT)により解決されることが多くあります。例えば、Society5.0社会に利用されるEV、自動運転、ロボット、ドローン、IoTセンサなど全てのモノ(Everything)へエネルギー供給を行うことにより、充電・給電を意識しない社会が実現でき、WPTによるイノベーションも創出できます。また、5G(第5世代移動通信システム)情報&電力を統合したワイヤレスネットワークを構築することにより、最先端の電力制御・安全利用のためのマネジメントシステムを実現できます。さらに、EVの普及および走行中給電EVの実現により、電池容量削減によるEV軽量化でエネルギー負荷低減化の効果やEV蓄電池活用による再エネ増加による系統電力安定化への活用などが期待できます。この他、ドローンへのワイヤレス給電の実現により、インフラの保全革新による社会コストの抑制が可能になり、災害時活用による迅速な対応と安心な社会の実現にも貢献します。以上のことから、WPTシステムの社会実装に対する期待は大きくなっており、IoE応用・実用化に向けて研究開発をしていきます。

C-① センサネットワークおよびモバイル機器へのWPTシステム

WPTシステムとして、2つの給電方式と双方の方式に共通する課題の研究開発を進めます。時間・空間・周波数の3次元分割により、人体や他システムへの影響を低減するiTAF-WPT(※)という新しいコンセプトを提案し、この実現により高い給電効率を目指します。本研究では、以下の2つの開発テーマに取り組みます。

(※)iTAF-WPT(intelligent Time-Area-Frequency Control WPT):時間・空間・周波数を統合制御する技術。電波曝露に対する安全性確保、他無線システムとの共存、最大効率での電力伝送を実現。

(1)分散アンテナによる協調ビーム制御方式

本方式は家庭や工場および介護施設などの屋内空間に多数配置された環境センサーや物流センサーおよび生体センサーの電池レス、配線レスを実現するためにμW~mW級広域な給電を目指します。

(2)高度ビームフォーミング方式

本方式において、モバイル機器、IoTセンサー、情報端末への充電、工場などで移動するセンサーの給電を実現するために、数mW級から数W級の給電を目指します。

C-② 互換性・安全性を考慮した電気自動車への走行中ワイヤレス給電

脱炭素社会に向けては自動車のCO₂排出量削減は急務であり、電気自動車は有力な解決手段です。しかし、航続距離や充電待ち時間といった利便性の課題があります。そこで走行中にワイヤレスでエネルギーを供給する走行中給電の実現が期待されており、本研究では以下の3つの開発テーマに取り組みます。

(1)機器互換性と金属異物検出手法の確立

本方式において、モバイル機器、IoTセンサー、情報端末への充電、工場などで移動するセンサーの給電を実現するために、数mW級から数W級の給電を目指します。

  • 課題1 各社開発中のEVワイヤレス給電の互換性
  • 課題2 電磁界に対する安全性(誘導加熱、誘導電流、漏洩磁界、EMIなど)

(2)高速走行に対応した高効率走行中給電技術の確立

磁界結合WPT方式により、ワイヤレスインホイールモータ、平行二線方式走行中給電をベースに高速走行中給電技術を確立し、テストコースでの実証実験を目指します。①大出力化・高効率化、②コイル小型化による搭載性改善、③過渡応答制御、④複数コイルへの同時給電などの技術課題の解決に取り組みます。

(3)経済成立性の検討

精度の高い経済成立性・実現性検討を行い、ビジネスモデル、社会実装シナリオを明確にしていきます。

  1. 導入シナリオ設定
    限定地域 ⇒ 全国展開へ段階的に導入
    ※事前検討では、
    ・信号機の直前の30mの区間のみにWPT送電機を敷設するだけで走行中給電システムが成立
    ・日本全国に展開しても6240億円(日経産業新聞試算)~2兆円程度の設置コスト
    このインフラ投資コストは電池削減費用や利用者負担により回収できるレベル
  2. 費用の試算
      各シナリオ毎に設置・運営費用を試算
  3. 各種規定の確認
      社会実装に向け関係府省と連携
  4. メリットの具体化
      各ステークホルダーとメリットの洗い出し

C-③ ドローンWPTシステム

日本では人口減少が進む中、社会インフラ維持管理に従事する人員確保は困難となり、代替え手段としてドローンやロボットなどへの期待が高まっています。ドローンなどを実適用するには、長時間安定して稼働することが必須であり、ワイヤレス電力伝送(WPT)システムはこれを支える重要な技術となります。 本提案は、ドローンを対象に、駐機時近距離での大電力WPTシステムおよび飛行時遠距離での送電制御WPTシステムの開発を目的とします。WPTシステムの課題である送電側・受電側の高効率化、伝送技術の高度化や機器干渉回避技術などの開発とともに、ドローン搭載に不可欠な受電部の小型・軽量化および高耐電力化を図ります。

(1) 近距離・大電力WPTシステム研究開発

地上等にドローンポートを設け、駐機時にドローンに搭載する電池を充電する近距離WPTを利用したワイヤレス充電システムを開発します。①大容量・軽量化した送・受電部とこれらを組み合わせたシステム、②最適なドローンポート構造、③ドローン充電システムのエネルギーマネジメントシステムなどの開発に取り組みます。また、磁界結合WPT方式、電界結合WPT方式の検討を行い、最適な利用シーンを見極めます。

(2) 遠距離・送電制御WPTシステム研究開発

地上等に設置した送電部からマイクロ波により,その上空を飛行しているドローンに設置した受電部へ電力伝送するシステムを開発します。送電部・受電部・ビーム制御部に関する要素技術とこれらを組み合わせた遠距離送電試験装置(スケーラビリティのある装置)の開発などに取り組みます。

(3) WPTシステムの最適化、実証評価

WPT実証試験用の機体を開発、開発目標に沿った実証試験を実施し、評価します。①ドローン機体への電磁波の影響評価、②充電方法・回路検討等によりWPTシステムに適した機体の設計・開発、③ドローン用WPTシステムのユースケースに応じた実証試験の検討・実施・評価などの課題に取り組みます。