(B) ワイヤレス電力伝送(WPT)システム

サブプログラムディレクター(SPD)

庄木 裕樹 株式会社 東芝 研究開発センター ワイヤレスシステムラボラトリー 上席エキスパート

研究内容

遠距離・高効率・大電力で安全なワイヤレス電力伝送を用いたエネルギーマネジメントの実現に向けて、我が国が強みを持つ次世代半導体をもとにした高周波デバイスの開発、WPTシステムの送信側・受信側の高効率化、高度伝送制御技術の開発等を実施し、B-②EVへの走行中給電、B-③屋外での給電(ドローン、インフラ維持・管理)、B-④屋内での給電(センサーや情報機器等)で実証する。

目標/出口戦略

SIP事業期間内に、EV用の走行中給電技術、ドローンへのkWクラスの屋外給電技術、人体などの存在する環境でも安全に高い時間効率でワイヤレス送電できる技術など世界を凌駕する技術を確立して、世界初の社会的な実証を実践し、実用化につなげる。SIP終了後には参画した企業を中心に事業化するとともに、研究開発成果に基づき、産学官が参画するコンソーシアムや自治体等と連携しつつ、技術規格の策定や国際標準化に向けた取組を実施する。

ワイヤレス電力伝送(WPT)システム
ワイヤレス電力伝送(WPT)システム

出典:脱炭素社会実現のためのエネルギーシステム研究計画書(7ページ) ( 内閣府のサイトへ)

B-① 持続可能スマート社会実現のためのWPTシステム基盤技術

新しい電力供給形態として期待されるワイヤレス電力伝送(WPT)システムとして、MHz帯を用いた非放射型電力伝送システムおよびマイクロ波帯を用いた放射型電力伝送システムの基盤技術開発を行う。それぞれのワイヤレス電力伝送システムにおいて小型化、高効率化、大電力化に適したデバイスおよび回路の研究開発を実施し、13.56MHz帯と5.8GHz帯において電力伝送システムとして機能の実証(POC)を行う。この研究開発成果により、IoT社会で多様化する電力消費要求に応えるとともに、社会全体のエネルギーマネージメント効率化、脱炭素化に寄与する。

  • MHz帯電力伝送システムの概念図
    MHz帯電力伝送システムの概念図
  • マイクロ波帯電力伝送システムの概念図
    マイクロ波帯電力伝送システムの概念図

B-② 互換性・安全性を考慮した電気自動車への走行中ワイヤレス給電

脱炭素社会の実現に向けて自動車のCO₂排出量削減は急務であり、電気自動車は有力な解決手段である。しかし、航続距離や充電待ち時間といった利便性の課題がある。そこで走行中にワイヤレスでエネルギーを供給する走行中給電の実現が期待されている。本研究では、以下の3つの課題に取り組む。
①機器互換性と金属異物検出手法の確立
②高速走行に対応した高効率走行中給電技術の確立
③経済成立性の検討
①では異なるメーカーの機器間での互換性確保のため必要な設計制約条件を提示し、その評価施設を構築して実験検証を行なう。また、安全面の課題である金属異物検出手法の提案と実験検証を行なう。


  • 互換性評価事例のイメージ

  • 走行中WPTシステム(東京大学)

  • 交差点WPTシステムの設置イメージ

B-③ 屋外無線給電技術の研究開発・実証

日本では人口減少が進む中、社会インフラ維持管理に従事する人員確保は困難となり、代替え手段としてドローンやロボットなどへの期待が高まっている。ドローンなどを実適用するには、長時間安定して稼働することが必須であり、ワイヤレス電力伝送(WPT)システムはこれを支える重要な技術となる。本提案は、ドローンを対象に、駐機時近距離での大電力WPTシステムおよび飛行時遠距離での追尾送電制御WPTシステムの開発を目的とする。WPTシステムの課題である送電側・受電側の高効率化、伝送技術の高度化や機器干渉回避技術などの開発とともに、ドローン搭載に不可欠な受電部の小型・軽量化および高耐電力化を図る。


  • 電波暗室内WPT試験
  • 室内での試験評価後

  • 変電所等屋外WPT試験

B-④ センサーネットワークおよびモバイル機器へのWPT システムの開発

WPTシステムとして、2つの給電方式と双方の方式に共通する課題の研究開発を提案する。これらを実現するにあたり、時間・空間・周波数の3次元分割により、人体や他システムへの影響を低減するiTAF-WPTという新しいコンセプトを提案し、この実現により高い給電効率を実現する。目標としては、以下の2点である。

(1)分散アンテナによる協調ビーム制御方式
家庭や工場および介護施設などの屋内空間に多数配置された環境センサーや物流センサーおよび生体センサーの電池レス、配線レスを実現するためにμW~mW級広域な給電を目指す。

  • 工場内の生産および品質管理

  • エイジフリー事業における監視
(2)高度ビームフォーミング方式
本方式において、モバイル機器、IoTセンサー、情報端末への充電、工場などで移動するセンサーの給電を実現するために、数mW級から数W級の給電を目指す。

  • 工場におけるセンサやロボットへの給電

  • インフラ点検

  • モバイル機器への給電