IoE社会のエネルギーシステム テーマA

研究開発項目:B
「IoE共通基盤技術」

  • 担当サブPD
    髙橋 良和
    東北大学 国際集積エレクトロニクス研究開発センター 教授

研究開発の背景・目標

エネルギーと情報が融合する社会(IoE社会)のエネルギーシステムにおいては、エネルギーを生み出す機能および蓄積する機能の他に、柔軟なエネルギーマネジメントを可能とするエネルギーの伝送技術と、さらにこれらをつなぐインターフェースとしてエネルギーの変換を担うパワーモジュールが必要となります。
現状のパワーモジュールは、アプリケーションごとのカスタム品が多く、今後予想される爆発的増加に対して開発者不足・開発効率の悪化が予想されます。また、アナログ制御に対応しているため不規則な電源変動などに対応した瞬時フィードバック、予測、パワーエレクトロニクスネットワーク間での通信には不向きです。これらの欠点をブレークスルーするために、超高速デジタル制御とコアモジュールで安価が期待されるWBGデバイスを自在に組み合わせることでユニバーサル性とスマート性を両立させ、IoE社会でのエネルギー変換のイノベーションを創出し、当該パワーエレクトロニクス製品の開発効率の向上にも寄与するユニバーサルでスマートなパワーモジュールの開発が期待されています。
IoE社会では、エネルギー需要の増加とその消費形態の多様化に対応しうる、柔軟な接続性と制御性を持つ電力伝送技術が必要となります。この要求に応えるWPT技術は、携帯機器への充電や停車中EVへの給電システムなど実用化されていますが一部となっています。WPT技術の選択肢と適用分野を広げる意味で、また伝送能力の大容量化と機器の小型化を可能とする技術として、MHz帯およびマイクロ波帯を用いるWPT技術の開発が期待されています。
テーマ(B)では、①「エネルギー変換」と②「エネルギー伝送」のイノベーションに資する技術を遂行していきます。

B-① エネルギーデバイスへの応用を見据えたIoE共通基盤技術

再生可能エネルギーを含めた多様な入力電源に対応可能な、USPM(汎用性のある高機能パワーモジュール/Universal Smart Power Modules)の開発により、パワーシステムの総コスト低減を目指します。また、材料技術の進展を活用した高速でのスイッチングが可能となるUSPM を開発します。
本研究では、3つの開発研究テーマに取り組みます。

USPMの概要

USPMの具体的な機能

  • ユニバーサル性:コアパワーモジュールと高速デジタル駆動制御を駆使し、Wide Band Gap(WBG)デバイスの優れた特性を極限まで活かし、数々の異なるパワーエレクトロニクスアプリケーション、機種に対応
  • スマート性:デジタル制御により負荷状況やユニット間特性差に応じて最適に制御可能
  • 低コスト:コアパワーモジュールを標準化し個別設計を最小限とする。

USPM における新WBG+高速デジタル制御+ユニットモジュールの組合せでIoE用電力変換器に対応

(1)超高速デジタル制御を有するノイズフリーUSPMとその応用技術の開発

(2)高パワー密度、高温動作可能なWBG チップ搭載パワーモジュール

(3)コランダム構造酸化ガリウムを用いたパワーMOSFETの開発

B-② エネルギー伝送システムへの応用を見据えた基盤技術

本研究では、持続可能スマート社会実現のためのワイヤレス電力伝送システムの基盤技術として、システムの小型化、高効率化、大電力化を実現する高品質窒化ガリウム(GaN)デバイスによる縦型及び横型のパワー半導体と、それらのGaNデバイスを用いた回路技術を開発します。さらに、これら要素技術により、MHz帯を用いた非放射型電力伝送システム及びマイクロ波帯を用いた放射型電力伝送システムを開発し、その電力伝送システムとしての機能を実証します。この研究開発成果により、IoE社会で多様化する電力消費要求に応えるとともに、社会全体のエネルギーマネジメント効率化、脱炭素化に寄与します。

MHz帯を用いた非放射型電力伝送システム(13.56MHz)(縦型GaNパワースイッチングデバイス適用)

  • 特徴:高周波化によるWPTシステム(コイル等)の小型軽量化、伝送距離向上
  • 用途:駐機ドローンへの急速充電、EVへの給電
  • 縦型GaNパワースイッチングデバイスの特徴:SiCやGa2O3では難しい高速スイッチングが可能。横型GaN HEMTでは対応できない高耐圧・大電流が求められるWPT用デバイスとして期待。

マイクロ帯を用いた放射型電力伝送システム(5.8GHz)(横型GaNマイクロ波デバイス適用)

  • 特徴:マイクロ波の直進性を利用した長距離、ピンポイント給電
  • 用途:オフィスや工場などでのピンポイント給電、将来的には長距離電力伝送
  • 横型GaNマイクロ波デバイスの特徴:マイクロ波パワー領域では横型GaN高電子移動度トランジスタ(HEMT)が唯一のソリューション。GaN HEMTは既にレーダー(防衛、気象)、基地局(4G/LTE)の高出力増幅器に使用されており、WPTでは大電力受電用デバイスとして期待。

M H z帯電力伝送システム研究開発のポイント

マイクロ波帯電力伝送システム研究開発のポイント