森川海のつながりと河口・沿岸域の生物生産
山下洋・田中克
恒星社厚生閣 2008年
わが国は四囲を海に囲まれた森の国であり、森里海の生態系が川を介してつながることで、流域・河川・沿岸海域の環境が維持されてきた。ところが近年の急激な人間活動増大による自然環境改変による自然環境改変は森川海の生態系に大きな変質をもたらした。しかし、森川海の生態系の研究はそれぞれ異なった学会に属する研究者群により行われていて、その有機的なつながりが明らかにされることはなかった。一方で、日本各地で沿岸漁業に対する森の重要性を直観した漁民による森造りが盛んに行われるようになってきている。
本書は水産学者が里や森の生態系学者を巻き込んで、森川海の物質循環、その沿岸海域生態系への影響を明らかにしようと試みた第1歩の成果報告書である。黒部川ダム排砂の漁業影響に冠するレポートも含まれている。
(柳 哲雄:九州大学応用力学研究所 教授)