温暖化論のホンネ
「脅威論」と「懐疑論」を超えて
武田邦彦・江守正多・枝廣淳子
技術評論社 2009年
本書は、異なる分野で環境問題に関わっている3名が、温暖化問題についての認識を相互確認しあいながら、見解の一致点・相違点を巡って激論を繰り返す鼎談を出版化したものである。江守氏と武田氏は温暖化脅威論と懐疑論の代表者で議論が噛み合わないと考えられがちだが、本鼎談を通じてIPCCの第4次報告書に対する認識共有からひとつひとつ議論を丹念にこなし、最終的に温暖化問題の懸念に対して現世代の日本人がどう受け止め対応すべきか、という段階に至って、見解の分岐点が生じるものであることが明らかにされている。科学と社会の応答、気候変動問題に対する社会的な意思の形成における科学者・専門家の役割を考える上で、大変に参考となる刺激的な書である。
(柳下正治:上智大学大学院地球環境学研究科 教授)