科学は誰ものか
社会の側から問い直す
平川秀幸
NHK出版 2010年
研究プロジェクトの代表者のひとりである平川秀幸氏が、科学技術社会論の概要を明快かつコンパクトにまとめた好著。科学技術への無条件の信頼が1970年代に曲がり角を迎えたこと、BSE問題が科学の統治からガバナンスへの決定的なターニングポイントとなったこと。その変化の背後に、実験室を離れた現実社会で科学が持つ不確実性、あるいはリスクをめぐる評価の基準設定の多様さがあることなどが、先行研究を踏まえて分かりやすく論じられている。ぜひ一読をお勧めしたい一冊である。
(中島秀人:東京工業大学大学院社会理工学研究科 教授)