世界は分けてもわからない
福岡伸一
講談社現代新書 2009年
ヒトは、本能的に見えるものに何らかの意味づけをしたがる生き物らしい。北斗七星しかり。北斗七星は通常の人間の視力で見える形であり、望遠鏡で見れば星の光の洪水の中で形を成さなくなる。著者の福岡氏(分子生物学者)は、これを「空目(そらめ)」と呼んでいる。ヒトは、この世の中を空目で見る過ちを犯しがちである。特に、因果関係を見つけ出したいと願った時に、見たいように見てしまうことがあるのだ。この本を読むと、現在、因果関係があると思われているものごとも再考する必要があるのではと思わされる。ヒトにとって空目が避けられないものならば、そうやって考え直すことも必要なことなのだろう。
(明石圭子:長浜市健康福祉部健康推進課 参事)