私の中のあなた(上)(下)
ジョディ・ピコー
川副智子/訳
早川書房 2009年
白血病の姉のドナーとなるべく、遺伝子操作によって生まれた13歳の少女アナ。幾度もの骨髄提供に加え、腎臓の提供も求められた彼女は、自分の身体を守る権利があると両親を相手に訴訟を提起する。
日本では臓器移植法が改正され、15歳以下の小児についても親族の承諾によって臓器提供が可能となった。新たな可能性に希望を抱く家族がいる一方で、臓器提供への無言の圧力に苦しみ、怯える別の家族がいる。研究開発に携わる科学者や技術者、技術の社会導入を決定する政策決定者は、科学技術のもたらす人々の苦悩にも想像力を働かせ、その痛みに共感する感受性をもっていなければならない。ドナーを運命づけられたアナの心の葛藤や、二人の娘をめぐる両親の苦悩を体験できる一冊である。
(畑中綾子:東京大学政策ビジョン研究センター 特任研究員)