社会的孤立・孤独の予防と多様な社会的ネットワークの構築|RISTEX

RISTEX社会技術研究開発センター

プロジェクト
2022年度採択

社会的養護経験者(ケアリーバー)の社会的孤立を防ぎ、支援と繋がりながら自立を支える仕組みを創る

研究代表者:宮地 菜穂子

同朋大学 社会福祉学部 准教授

自立支援、リービングケア、アフターケア、里親、児童養護施設

研究開発期間:2022年10月~2027年3月

プロジェクト概要

ケアリーバーが子ども時代に生活を共にした支援者らとのつながりを維持する

児童養護施設などで暮らした子どもの退所後の実態把握を目的とした初の全国調査結果(厚生労働省2021年発表)では、施設などのサポートを受けていない者は5人に1人に上り、孤立している実態や長期的な見守り・支援に向けた課題が明らかになりました。多くの社会的養護経験者(ケアリーバー)と支援者とのつながりは途切れてしまっています。その主な原因には、施設や里親がケアリーバーの連絡先を知らないこと、社会的養護の子どもたちは原則18歳で自立を余儀なくされる一方で、アフターケア体制は十分に整っていないことが挙げられます。

ケアリーバーが支援者とつながり続けられる仕組みを構築し、インケアからアフターケアへの切れ目ない支援体制を実現する

本プロジェクトでは、この制度の穴を埋める新しい仕掛けとしてつながりを継続できるツールを開発し、社会的孤立・孤独を生まない社会の実現を目指します。具体的には、①自立目前の児童養護施設入所児童、里親委託児童、ケアリーバー、支援者、職親などへの実態調査と分析から社会的孤立・孤独に陥るリスクの可視化と、②生活状況などをチェックする指標など(評価手法)を開発するとともに、孤立と対極にあるつながりを可能とする要素を描出します。並行して、③ケアリーバーと支援者が安全につながり、連絡調整できるモバイルメッセンジャーアプリケーション(アプリ)を開発します。①から③まで一体的に実施していく中で、モニターによるアプリ試作品の試行とヒアリングに基づき、アプリ試作品のバージョンアップを重ねながら、都市部と地方の2地域において試行し概念実証を行います。そして、ケアリーバーが安心できる支援者に相談でき、必要な時に社会資源とつながれる仕組みを構築することが本プロジェクトの最終目標です。

Q&A

社会的孤立・孤独の一次予防のために、本プロジェクトが目指す社会像についてもう少し教えてください。
社会的養護の子ども達の多くは、児童福祉から離れた時に支援が途切れ、制度の狭間に落ちてしまう現実があります。この措置解除されて間もない時期(移行期)におけるつながりの維持は、社会的孤立・孤独の一次予防として非常に重要です。本プロジェクトでは、この制度の穴を埋める新しい仕掛けとして、つながりを継続できるツールとしてのアプリ(きずなコネット)を開発し、措置中から生活を共にする支援者のみならず地域の支援者・専門家らとも繋がれるようにすることで、措置解除後の社会的孤立・孤独を予防すること目指しています。
上記の社会像を実現するための最大の課題(ボトルネック)は何ですか?
大きく分けて2点あります。1点目は、児童養護施設入所児童のスマホ所持に関するルールが各施設の方針によって違うことです。そのため丁寧に各施設の方針や趣旨を確認、尊重しながら協議を重ね、乗り越えられる方策を見出していきます。2点目は、入所児童と施設外の支援者・専門家との繋がりの中で把握した情報を入所施設や委託里親へ開示する際の基本方針についてです。モニターとして入所児が参加する以前に弁護士及び施設関係者らと十分に協議を重ね、基本方針を明確化し共有した上で試行を開始する予定です。

参画・協力機関

  • 同朋大学、中京大学、福島大学、愛知県児童福祉施設長会、一般社団法人愛知県里親会連合会、福島県児童家庭支援センター協議会、福島ペアレントトレーニング研究会、福島県社会福祉協議会児童福祉施設部会、全国児童養護問題研究会、特定非営利活動法人アスペ・エルデの会 など

実施報告書

プロジェクトウェブサイト等