社会的孤立・孤独の予防と多様な社会的ネットワークの構築|RISTEX

RISTEX社会技術研究開発センター

プロジェクト
2022年度採択

都市集合住宅高齢者の社会的孤立を予防する持続可能なコミュニティ構築

写真:片桐 恵子

研究代表者:片桐 恵子

神戸大学 ウェルビーイング先端研究センター 教授

都市郊外賃貸住宅居住高齢者、レジリエンス、近隣ネットワーク、バーチャルネットワーク、マルチモーダル調査、アクション・リサーチ

研究開発期間:2022年10月~2027年3月

researchmap

プロジェクト概要

家族、近隣との交流が乏しい日本の高齢者の社会的孤立・孤独のリスクの高さ

現在一人暮らし高齢者の割合が増加しています。日本は海外と比べて別居子との交流が少なく、また近隣との付き合いも乏しいです。特に都市部、賃貸住宅においてその傾向が高く、社会的孤立・孤独のリスクが高いです。近年大規模災害もたびたび起き、あらためて近隣ネットワークの大切さが注目され、また、全国を対象としたランダムサンプリング調査の結果からも、近隣付き合いが高齢者のウェルビーイングに関連することも明らかになっています。一方で、近隣トラブルもよく見聞きすることもあり、全体としては近隣付き合いの希薄化が進んでいます。

生涯教育によるレジリエンス育成とリアルとバーチャルなコミュニティ・ネットワーク形成

本プロジェクトの目標は大きく3つあります。1つには、こころと身体から見た社会的孤立・孤独の関連を明らかにします。質問紙調査、インタビュー調査、運動機能・感情関連ホルモン・認知機能などをマルチモーダルに縦断的に測定し、本プロジェクトの効果を科学的エビデンスに基づき評価します。2つには、イベント“ワイがやフォーラム”や生涯教育“ワイがやカレッジ”を実施することにより、住民間の交流を促進し、コミュニティ・ネットワークを形成することです。コミュニティ・ネットワークは対面による交流だけでなく、ICTを活用して、バーチャルでもつながり、リアルとバーチャルの複層的ネットワークを構築することを目指します。3つには、生涯教育を実施することにより、人生100年時代に向けてのレジリエンスを高めます。4つには、コミュニティ・ネットワークの形成をレジリエンスを高める生涯学習の実施により、将来のコミュニティを支えるリーダーの創出を目指します。5つには孤立を予想するモデルを構築することにより、将来の孤立リスクを算出し、孤立に陥らない方策をアドバイスします。

図:片桐プロジェクトの概要

Q&A

社会的孤立・孤独の一次予防のために、本プロジェクトが目指す社会像についてもう少し教えてください。
従来人々は血縁・地縁という強い絆で守られてきましたが、家族の個人化や地域社会の崩壊により、社会的孤立・孤独になるリスクが高まっています。家族関係には介入できませんし、生活圏の広域化により、家族が近隣に住むことは難しくなるばかりです。一方、災害時や日常生活には、近隣付き合いが重要になります。本プロジェクトでは、地域社会に緩やかなネットワーク、今の時代に合ったほど良い距離感を持った近所付き合いを構築することで、孤立や孤独に陥らない地域社会を構築することを目指しています。
上記の社会像を実現するための最大の課題(ボトルネック)は何ですか?
本プロジェクトでは、都市郊外の集合住宅での緩やかなコミュニティづくりに役立つマニュアルを作成し、他の地域でも同じような取り組みができるようにと考えています。そのためには、行政や企業の支援なども得る必要がありますが、その説得のためには、本プロジェクトの効果を科学的に検証することが必要です。あいにく現時点(2024年4月)では、効果測定への住民の関心が薄く、調査協力者が十分確保できていない状況にあります。
ワイがやカレッジフライヤー画像
第1回ワイがやカレッジの様子

参画・協力機関

  • 神戸大学ウェルビーイング先端研究センター、神戸大学大学院人間発達環境学研究科、神戸大学数理・データサイエンスセンター、神戸大学大学院工学研究科、神戸大学社会システムイノベーションセンター、神戸大学学術研究推進機構学術研究推進室、都市再生機構西日本支社兵庫エリア経営部、YYカフェ、神戸市灘区鶴甲地区民生委員児童委員協議会、六甲摩耶あんしんすこやかセンター、デザイン・クリエイティブセンター、合同会社 々、W Inc. など

プロジェクトウェブサイト等