社会的孤立・孤独の予防と多様な社会的ネットワークの構築|RISTEX

RISTEX社会技術研究開発センター

プロジェクト
2022年度採択

オールマイノリティプロジェクト:発達障害者を始めとするマイノリティが社会的孤立・孤独に陥らない認知行動療法を用いた社会ネットワークづくり

研究代表者:大島 郁葉

千葉大学 子どものこころの発達教育研究センター 教授

認知行動療法、自閉スペクトラム症、社会的カモフラージュ、メンタルヘルス、スティグマ(偏見)

研究開発期間:2022年10月~2027年3月

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プロジェクト概要

マイノリティはマジョリティから無意識の差別(マイクロアグレッション)を受けやすく、孤立・孤独化しやすい

マイノリティの人たちは、そうでない人々(マジョリティ)からの孤立を避けるために、マジョリティの社会に馴染むための努力をしていますが、その結果、さまざまな精神的な負担がかかっています。この要因の一つとして、社会通念や常識が、マジョリティの価値観の上に成り立っていることが挙げられます。例えば、マイノリティの一例である発達障害の人は、「ひとつのことにこだわる」といった特性がありますが、その特性はマジョリティの常識によって、「普通」より「頑固」で「気の利かない」人であると捉えられ、社会に受け入れられず、周縁に追いやられることが多々あります。この状況は、日常的に体験する社会的な偏見や差別である「マイクロアグレッション」として、マイノリティの人が浴びやすいものと言えます。

マイノリティへのマイクロアグレッションを予防し、マイノリティが社会的孤立・孤独に陥らないフェアな社会を実現する

オールマイノリティプロジェクトでは、マイノリティの中でも、まずは発達障害に着目し、発達障害の人の価値観をマジョリティ中心の社会に浸透させるための活動をします。具体的には、調査によって発達障害のマイクロアグレッョンが発達障害者の社会的孤立・孤独をどのように引き起こすのか、そのメカニズムを明らかにします。次に、発達障害の人が体験しているマイクロアグレッョンを解消するために、認知行動療法の理論を用いた「オールマイノリティアプリ」を開発します。このアプリでは無意識に行なってしまうマイクロアグレッションを見える化して気づきやすくすることを目指します。発達障害の人にかかわる人たち(支援者や保護者)に実施し、効果検証を行います。さらに、マイノリティをテーマとした短編動画や漫画を作家らと共同で創作し、アプリやSNS等を通じて広く社会に啓発します。このように「発達障害」を皮切りとして、マイノリティの価値観への理解・受け入れの促進およびマイクロアグレッションの減少を目指すことで、様々なマイノリティの人権を尊重する、マイノリティが社会的孤立・孤独に陥らないフェアな社会の実現へとつなげていきます。

Q&A

社会的孤立・孤独の一次予防のために、本プロジェクトが目指す社会像についてもう少し教えてください。
社会的孤立・孤独の一次予防のために、本プロジェクトは、日々のマイノリティへのマイクロアグレッションを通して世間の片隅に追いやられて「ないもの」とされてきたマイノリティの価値観や規範をマジョリティが認知し、社会の中で両者の共存を目指すことを大きな目的としています。そうすることで、マイノリティの孤立・孤独を防ぎ、マイノリティであることを守られながら社会参加ができることで、メンタルヘルスの増進が可能となることに、本プロジェクトの最大の貢献があると考えています。
上記の社会像を実現するための最大の課題(ボトルネック)は何ですか?
本プロジェクトが目指す社会像を実現するための最大の課題は、マイクロアグレッションを行う側(特権階級であるマジョリティ)に生じやすいと考えられる心理的な抵抗を超えて、どのように「オールマイノリティアプリ」を自発的に使っていただくかという点です。自分に差別や偏見があると自覚することは難しく、そのことを指摘されたときに心理的抵抗が生じるのは自然なことです。それを超えて、行動の変化を起こしてもらうために、本プロジェクトでは、マイノリティやマイクロアグレッションの関連性、そして行動変容のプロセス、その先にある社会的利益について丁寧に心理教育を行うことができるツールを織り交ぜていきたいと考えています。

参画・協力機関

  • 千葉大学、専修大学、浜松医科大学、株式会社Awarefy、国立障害者リハビリテーションセンター、信州大学、早稲田大学、大阪大学、帝京大学、千葉大学附属病院、千葉市発達障害者支援センター、相模原女子大学、株式会社LITALICO、一般社団法人みらいのいばしょ研究所、一般社団法人UNIVA など

実施報告書

プロジェクトウェブサイト等

プレスリリース

関連リンク