成果概要
誤り耐性型大規模汎用光量子コンピュータの研究開発[5] 光量子コンピュータのクラウド化と運用に関する研究開発
2024年度までの進捗状況
1. 概要
光量子コンピュータでは、時間領域多重を用いることでコンパクトな系でスケーラブルな量子計算を実現できます。そのため量子コンピュータ実現の有力候補と考えられます。課題推進者1,4のグループと協同して、光量子コンピュータをクラウド公開し運用するための研究開発に取り組んでいます。光量子コンピュータで任意の「計算」を実行するためにはハードウェアとしてのシステム構築だけでなく、それを外部から自在に操作し、ソフトウェア開発者が簡単に利用できるような仕組みが必要です。また広く社会実装していくためにクラウド上に公開するプラットフォームを構築しています。
2. これまでの主な成果
研究開発項目4のグループで開発した光量子コンピュータを、クラウド公開するシステムを構築しました(図1)。

クラウド公開にあたっては、今後の拡張性や利便性を考慮し、多層化したシステム設計を検討し実装しました(図2)。本光量子コンピュータでは、最も抽象的なプログラミングモデルとしては連続量の量子回路を取り扱います。これはユーザーの手元にインストールするSDK(ソフトウェア開発キット)を通じて、通常のPythonプログラムのように記述することができます。入力されたプログラムはクラウドサーバに転送され、実機で実行できる形式に変換されて、実験室内の光量子コンピュータに渡っていきます。処理結果は逆の順序でユーザーに返却されます。

本光量子コンピュータは時間領域多重法により、2次元クラスター状態を生成します。この状態を用いて量子計算を記述する手法を「グラフ表現」と呼んでいます。SDKで構築された連続量量子回路は、自動的にグラフ表現に変換され(図3)、さらに実機を直接操作するためのパラメータに変換されてから、実機に送られます。

また次世代実機で必要とされる「非線形フィードフォワード」操作を記述するための枠組みも開発しました。実機に投入するプログラムを、ユーザーが手軽に試せるように、シミュレータの開発も進めています。
3. 今後の展開
次世代実機の開発と歩調を合わせ、ソフトウェアの動作を確認していきます。複雑な回路やグラフ表現を作成する際に理解しやすいよう、可視化の方法を工夫したり、GUI上で回路やグラフを編集できるようにしたりする予定です。またより実用的なクラウドサービスに必要となる機能改修を継続します。これらにより、最適化問題やニューラルネットワークといった、光量子コンピュータを使った応用研究を行う環境を整備していきます。