成果概要

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誤り耐性型大規模汎用光量子コンピュータの研究開発[2] 超伝導光子数識別器に関する研究開発

2025年度までの進捗状況

1. 概要

GKP量子ビット(Gottesman, Kitaev, Preskillにより提案された誤り訂正が可能な連続量量子ビット)の生成のためには、高次の非線形光学過程の実現が必要となります。本プロジェクトでは、超伝導光子数識別器を用いた測定誘起型でこれを実現します。具体的には、スクイーズド光とビームスプリッターにより量子もつれを生成し、量子もつれの一部で超伝導光子数識別器を用いて所定の光子数を検出することで、GKP量子ビットを生成します。このGKP量子ビットが生成されるのは、所定の光子数が検出された瞬間なので、これを任意のタイミングで使うためには、量子メモリーも必要となります。本研究開発課題は、このための光子数識別器の開発を行っており、光量子コンピュータのクロック周波数1 GHz相当の動作帯域を目指して高速で光子数情報を取得可能な検出器の開発を行っています。
通信波長帯の単一光子計測が可能かつ、多数の光子数を識別可能なダイナミックレンジの広い光センサとして、超伝導転移端センサ(Transition Edge Sensor: TES)があります。TESは、超伝導体の薄膜に電流を流しつつ適切に温度を制御することにより、常伝導状態から超伝導状態に移行する途中の領域である超伝導転移端に保持し、この状態で近赤外光子が薄膜に吸収された際に生じる温度上昇を電流変化として読み出すことで、光子入射により吸収されたエネルギーに比例した信号を得るものです。本研究開発課題では、光量子コンピュータに対応したTESの高速動作を実現するために、電流変化をもたらす原因となる温度変化がセンサ全体で瞬時に生じるようにセンサのサイズを極小化したデバイスを製作します。センサのサイズを小さくすると同時に熱容量も小さくなるため、温度上昇も大きくなり、S/N比の向上と信号の高速化と光子数の同定にも寄与します。単一の波長の光子を計数する場合は、光子数に応じた離散的なエネルギーが入力されるために、入射した光子数に応じたピーク数が生じます。

2. これまでの主な成果

図1左に、本研究において製作した8 μm 角のTESの電子顕微鏡写真を示します。TESはシリコン基板上に形成し、光学部品のサイズに合わせた外形になるように加工し、セルフアラインメントで光ファイバとの位置合わせができるようにします。このようにして製作したTESの光入射による応答は立ち上がり時間16.2 nsを示し、信号帯域として、20 MHz以上が得られることを確認しました。

図1
図1 TES写真とセットアップ概略図

また、TESの動作帯域向上のために、まずTESにおける信号生成速度は薄膜内での熱伝導が律速することに着目しました。有感領域をパラレル分割して個々のセグメントが高速に応答するデバイスを開発し、これにおいても光子数識別が可能であることを確認しました。

図2
図2 パラレル分割型デバイス、および光子数識別の実証

一方で、読み出し技術による律速は課題として残っていました。通常TESの読み出しはSQUID (Superconducting Quantum Interference Device)を用いて行われますが、SQUIDでは動作帯域の制限があり、高速な信号を得ることができませんでした。そこで、高速のタイミング信号の測定には、低温で動作させたHEMT (High Electron Mobility Transistor)アンプによって行うことを考案し、実験で実証しました。この結果、多光子照射の状態ではあるものの、ナノ秒を下回る高速のタイミング信号が得られることを示すことができました。

図3
図3 レーザーパルス入射に対するSQUID信号、および半導体アンプからの高速信号

また、吸収率向上のために、イリジウムTESのための、誘電体多層膜による反射防止膜とミラー構造からなるキャビティ構造を開発しました。

3. 今後の展開

プロジェクト期間に、最も困難であった動作帯域向上に関して、その突破口を見出すことに成功しました。今後は単一光子から数光子の測定においても高速のタイミング特性を得ることが期待されます。