成果概要

細胞内サイバネティック・アバターの遠隔制御によって見守られる社会の実現[5] 生体内における細胞内CAの遠隔制御評価

2024年度までの進捗状況

1. 概要

イラスト

本研究開発項目では、細胞内サイバネティック・アバター(以下、細胞内CA)を搭載する細胞やその標的となる細胞(以下、標的細胞)を選定し、選定した細胞やCA搭載細胞をマウス検体またはヒト検体から効率よく抽出します。研究開発項目4の培養環境評価、および、研究開発項目6の生体模擬環境評価と連携することで、細胞内CAの設計、細胞内CA搭載技術の検討に取り組み、研究開発項目2、3にフィードバックします。
本研究開発項目では、(5-1)ではマウス・ヒト検体からの抽出技術を、(5-2)では腫瘍・老化細胞の選定と体内評価を、(5-3)では免疫細胞の選定と体内評価を担当します。

課題推進者

2. これまでの主な成果

本研究開発項目では、CA搭載細胞の作製や機能評価を行うためにCAの搭載対象となる細胞やCA搭載細胞の高効率抽出法を構築します(5-1)。研究開発項目2、3、4と共同で、生体外において細胞内CA搭載細胞(5-3)が標的細胞(5-2)に対して良好な機能制御性(検出・除去機能および機能停止)を有しているかそれぞれ評価します。さらに、細胞内CA搭載細胞の機能制御性評価を動物実験でも実施します(5-2),(5-3)。

(5-1)
微量のヒト検体から目的の細胞を高い生存率を維持した状態で分離し、分離後の細胞が増殖能を維持していることを確認しました。さらに、分離した細胞からCA搭載細胞を作製し、動物実験におけるCA搭載細胞の機能評価を行うために、5-3と連携して微量のマウス血液から目的細胞の分離試験を実施し、高い分離効率・生存率で分離可能であることも確認しました(図1)。
(5-2)
標的細胞・CA搭載検査細胞・CA搭載除去細胞の三者連携を評価するために、細胞動態計測・分取プラットフォームによる観察やシングルセルRNAシークエンス解析を開始しました。
(5-3)
細胞内CAを搭載する細胞として、プロジェクト内で容易に相互利用が可能な免疫細胞を選定しました。CA搭載細胞間で連携して標的細胞を除去するために必要な遺伝子の設計・構築を行いました。設計・構築した遺伝子がCAの搭載対象となる細胞に発現することをフローサイトメトリー解析により確認しました。

さらに、主として(5-2)と(5-3)が連携し、標的細胞・CA搭載検査細胞・CA搭載除去細胞の三者連携について細胞動態計測・分取プラットフォームを用いて機能評価を行い、CA搭載除去細胞による標的細胞の除去を確認しました(図2)。

図1
(図1)CAの搭載対象となるヒト・マウス細胞の分離 マクロピラーアレイによりCAの搭載対象となるヒト・マウス細胞を微量の検体から高い分離効率・生存率で分離可能である。
図2
(図2)細胞間連携後のCA搭載細胞による標的細胞の認識 細胞間連携後のCAの搭載細胞は標的細胞を認識して細胞障害連携して標的細胞の除去に重要なタンパク質を分泌するようになる(研究開発項目4で開発した細胞動態計測・分取プラットフォームによる計測により計測)。

3. 今後の展開

作製したCA搭載検査細胞およびCA搭載除去細胞が標的細胞を起点として想定した機能制御性を有するか、構築した実験系や細胞動態計測・分取プラットフォームを用いて評価をさらに行います。この評価は、各研究開発項目と連携して進め、CA搭載細胞がより安定した機能制御性を有するように必要に応じて改良し、将来的に個体内で機能することを目指します。