成果概要
細胞内サイバネティック・アバターの遠隔制御によって見守られる社会の実現[1] 細胞内CAに関するE³LSIの調査・検証
2024年度までの進捗状況
1. 概要
細胞内サイバネティック・アバター (以下細胞内CA) の利用には、その技術的な安全性や公正性を担保することが必要不可欠です。
細胞内CAの詳細な技術情報などの知財については厳重な管理が必要なため、本研究課題では、E3LSI(倫理的、経済的、環境的、法的、社会的課題)の観点に基づいて実施された細胞内CAの安全性評価についての情報を幅広く共有できる仕組みとセキュリティを確保した形での情報管理基盤を開発しています。研究開発項目2から6の各研究によって実施された個々の実験データ等を散逸させることなく、セキュリティを確保しながら保存・管理・共有する仕組みを構築、研究開発項目の担当者間の速やかな情報共有と円滑な項目間の連携を実現します。

2. これまでの主な成果
2022年度はE3LSIを専門とする、法務、科学技術社会論、生命・医療倫理等の有識者の人選を行いました。また、企業ヒアリングなどにより、細胞内CAの製造、設計部分のコンソーシアムを立ち上げるための動向調査を行いました。
2023年度は法務、科学技術社会論、生命・医療倫理等の有識者に、産業界のアドバイザーと共にE3LSI検討部会を設立しました。細胞内CAの製造、設計部分のコンソーシアムを立ち上げるために、細胞内CAの文献調査を行いました。また、他社特許調査による先行技術調査を行い、当該研究の新規性を明確にしました。
細胞内CAの安全性評価についての情報を幅広く共有できる仕組みとセキュリティ確保を目的とする研究開発課題「(1-2)細胞内CA開発促進のための情報基盤の構築と運用」を追加し、パブリックデータの収集およびデータベース化を行い、文献情報からの情報収集に最適なプロンプトを取得し、情報基盤の開発を進めました。
2024年度は、(1-1)においてはE3LSIの管理体制及び知財管理体制の立ち上げを行い細胞内CAの利用に対するガイドライン作成のためのワーキンググループ活動,細胞内 CA の利用に対する情報収集及び研究動向調査を行いました。図1のように、サイエンスアゴラ2024にプロジェクトのブースを出展しアンケートによる社会受容性の調査を開始しました。(1-2)では、細胞内CAの連携・協調に関連する各要素データを格納・閲覧できるログイン認証機能付きのユーザーインターフェースを開発し、ウェブブラウザ経由でプロジェクトメンバーに公開しました。また、細胞内CAおよびCA搭載細胞間の連携に関する実験データを登録・管理できるシステムを構築し、プロジェクト内での共有を容易にしました。

さらに、細胞内CA関連の文献テキストデータを自動収集するシステムを開発し、CAR-T細胞の開発や合成生物学による改変細胞の設計に関する1万件以上のアブストラクトを継続収集しました。加えて、大規模言語モデルを活用し、対象文献の要約を自動生成し、整理された情報としてデータベースに格納しました。
3. 今後の展開
 E3LSI検討部会を中心に、研究初期段階から細胞内CAの利用に関する課題を研究者と共に考えていきます。
また、検討部会内に設置した産業化検討委員会が主導するコンソーシアムにて、細胞内CA利用の社会実装へ向けて、流通や保存などの実行的な経済的課題の洗い出し等の検証をしていきます。また、細胞内CAの安全性評価についての情報を幅広く共有できる仕組みとセキュリティを担保する情報基盤においては、データ駆動型細胞内CA設計システムを構築し、細胞内CAの開発・設計を効率的に支援するための情報基盤を構築しセキュリティを確保しながら保存・管理・共有を行っていきます。