成果概要

細胞内サイバネティック・アバターの遠隔制御によって見守られる社会の実現[3] 細胞内CAの搭載

2024年度までの進捗状況

1. 概要

図

細胞内サイバネティック・アバター(以下細胞内CA)の技術の達成には、研究開発項目2で設計・構築された細胞内CAの搭載方法を、研究開発項目5にて選定される細胞種ごとに複数検討し、適した搭載方法を選択する必要があります。

課題推進者

本研究開発項目では、研究開発項目2で設計・構築した細胞内CAを、研究開発項目5にて選定された細胞の細胞膜表面または細胞内部へ効率よく搭載するために、3つの手法に着目して細胞内CAの搭載技術を開発します。
(3-1)では細胞への局所的な高効率搭載が期待される物理刺激を利用した搭載技術を、(3-2)では低侵襲な搭載が期待される細胞の嗜好性に基づいて設計したナノキャリアを利用した搭載技術を、(3-3)では細胞融合法を利用した複数の細胞内CAの同時搭載技術を開発します。

2. これまでの主な成果

研究開発項目3では、細胞内CAを細胞へ搭載して、検査細胞と除去細胞を作製し、また、標的のがん細胞・老化細胞に対して正確な検査・除去をサポートするためのマーカー分子を搭載するための技術を開発します。これまでに各課題において次の研究を行って参りました。

(3-1) エレクトロメカニカルポレーション法によるCA搭載技術として、培養環境において株化免疫細胞へ遺伝子ベースの細胞内CAを搭載することを達成しました(図1)。さらに、生体組織への局所的なCA搭載技術として、購入したモデル組織に対して深度を制御して穿孔できる技術を構築しました。

(3-2) 非ウイルス性のCA搭載細胞作製技術として、脂質を主成分とするナノ粒子を細胞に合わせて設計・作製し、培養環境において、株化免疫細胞へ複数種の遺伝子ベースの細胞内CAを搭載することを達成し(図2)、さらに付与した遠隔制御性を確認しました。

(3-3) 細胞同士の融合を利用した細胞内CAの搭載技術として、株化免疫細胞2種類に対して、キャリア細胞との融合とモデル分子の搭載を達成しました(図3)。また、融合後に余分な細胞核を排除する過程において、一方の細胞核を選択的に排除するための知見を見出しました。

図1~3

3. 今後の展開

培養環境において、ヒト・マウス血液から回収した免疫細胞に対して、3つの搭載技術を選択的に適用して、細胞内CAを搭載し、開始・条件分岐・中止のいずれかの遠隔制御が確認できるCA搭載細胞を作製していきます。また、生体内へのCA搭載技術として、3–1, 3–2においてマーカー分子の標的選択的な搭載技術の構築に取り組みます。CA搭載細胞の遠隔制御性などの状態は、画像解析、フローサイトメーター等の計測手法、RNAシーケンシング等により確認します。細胞内CAの搭載効率および、搭載処理後の細胞状態の詳細な評価を行うことで、より安心・安全な細胞内CA搭載細胞の作製技術の開発を目指します。
本項目3において、複数の細胞内CAの搭載技術を同時に検討することで、多種多様な細胞に対して適したCA搭載技術の選択・利用ができる、細胞内CA搭載細胞の生産体制の構築を目指します。