成果概要
細胞内サイバネティック・アバターの遠隔制御によって見守られる社会の実現[4] 培養環境における細胞内CAの遠隔制御評価
2024年度までの進捗状況
1. 概要

一般に、細胞は機能・特徴に不均一性を有します。そのため、細胞内サイバネティック・アバター(以下細胞内CA)が、設計通りに動作するかを評価するためには、培養環境において細胞内CAを搭載したアバター細胞の時間依存的な細胞状態の変化や細胞内CAに設計した機能の遠隔制御を1細胞単位で詳細に評価する必要があります。
これを実現するために、本研究開発項目では、研究開発項目3によって作製されたアバター細胞を、(4-1)マイクロ流体制御によって高速・高精度に抽出して均質化する微細操作技術、(4-2)ライブ顕微鏡によって形態・動態・活性および連携・協調動態を時系列に沿って多角的に計測し、特定の機能を示したアバター細胞および標的細胞を実時間で分取する動態計測技術、(4-3)深層学習画像解析によってアバター細胞の形態・動態・活性および連携・協調動態を、オミクス解析によって分取したアバター細胞から細胞内CAによる細胞内分子機能の遠隔制御性を評価する詳細分析技術、さらに(4-4)分子認識によってアバター細胞が出力する信号を選択的に検出する精密検出技術を開発します。これにより、細胞内CAによる遠隔制御性の評価と改善を高効率に行う技術基盤を確立します。


2. これまでの主な成果
研究開発項目4では、各課題推進者が得意とする技術に基づき、各課題で必要とされる要素技術の発明・改良を進めると共に、研究開発課題間の連携によって構築する細胞動態計測・分取プラットフォーム(図1)を用いた培養環境における細胞内CAの遠隔制御の評価を進めてきました。

(4-1) ピエゾ素子を利用した高速・高精度流体制御に基づき、蛍光の強度を指標にCA搭載細胞を複数の集団に流し分ける世界最高速のオンチップセルソーター技術、および顕微鏡下で狙った細胞を自在に採取する世界最高精度のピコリットルピペット技術を開発しました。
(4-2) 細胞同士が細胞表面分子や分泌分子を介してコミュニケーションする様子を実時間で可視化することに成功し、標的細胞・CA搭載検査細胞・CA搭載除去細胞の3者連携の動態評価を開始しました。また、ライブイメージング中に狙った細胞を適切なタイミングで回収することで、細胞活性に関連した遺伝子発現の特異的検出に成功しました。
(4-3) ライブイメージングで取得される画像から細胞像を時間軸に沿って抽出・追跡するAI自動アノテーションシステムを構築し、特徴量の抽出による細胞機能の定量評価を開始しました。また、シングルセルRNAシーケンシング解析により標的細胞・検査細胞、除去細胞の経時的な1細胞トランススクリプトーム解析から3細胞種のクラスターの同定し、遺伝子発現変動解析によって各細胞種の特徴を明らかにしました。
(4-4) 約1018種類のランダム核酸配列から、細胞内CAによってアバター細胞が放出する低分子化合物を高選択的に認識する核酸アプタマーの取得を開始しました。
3. 今後の展開
本研究開発項目で構築したin vitro評価技術をプロジェクト内に展開し、株化細胞やヒト・マウス血液由来の免疫細胞に細胞内CAを搭載したアバター細胞の遠隔制御による機能発現を多角的かつ統合的な評価を推進します。一方で、出力信号検出素子やピコリットルピペットなどの開発技術の統合を進め、アバター細胞の機能発現の瞬間を採取することで、細胞内CAによる連携・協調を実現する細胞内情報の解析と制御設計に貢献します。