成果概要

細胞内サイバネティック・アバターの遠隔制御によって見守られる社会の実現[2] 細胞内CAの設計・構築

2024年度までの進捗状況

1. 概要

細胞内サイバネティック・アバター(以下細胞内CA)の遠隔制御によって見守られる社会の実現には、(1)身体の不調の原因となる細胞を発見する機能、(2)発見した情報を増幅する機能(3)増幅した情報を体外で検出できるように変換する機能、(4)原因の細胞を除去する機能、(5)機能を遠隔制御によって駆動・停止できるスイッチ経路、(6)CA搭載細胞間あるいはCA搭載細胞と体内の免疫細胞と連携・協調によって把握・改善を達成する仕組みが必要です。本研究開発項目では、これらの機能を持つ細胞内CAの設計・構築します。構築した細胞内CAは、研究開発項目5により選定された細胞へ、研究開発項目3の技術で搭載され、研究開発項目4・5・6により評価されます。

専門家の意思を反映した細胞内CA
課題推進者
課題推進者

2. これまでの主な成果

研究開発項目2では、左記の(1)(4)(6)を実現する、研究開発課題(2-1)、(2-2)、(2-3)、(2)(3)を実現するために研究開発課題(2-1), (2-3)、(5)を実現させるために(2-2)、(2-3)、(2-5)と、重層的に研究開発課題を設定し、細胞内CAの設計および構築という挑戦的な問題を解決します。これまでに次の研究を行って参りました。

(2-1)ナノ粒子とDNAを活用したナノCAを複数設計・構築し、生体情報を光シグナルとして増幅的に検出可能な細胞内CAを構築しました(図1)。

(2-2)化合物をベースにした細胞内CAの一つとして、化合物処理によって細胞機能を停止することができるスイッチの導入を進めました。その結果、化合物の処理により速やかに細胞死(アポトーシス)を誘導して、細胞を停止できるスイッチを機能させることに成功しました(図2)。

(2-3)遺伝子をベースにした細胞内CAの一つとして、植物ホルモン受容体遺伝子を活用し、培養条件下でCA 搭載細胞の機能の開始・条件分岐を行うための基盤技術を構築し、特許出願をしました(図3)。

(2-4)CA搭載細胞の緊急停止機能として、合成DNA構造体を用いた細胞膜チャネル様細胞内CAの開発を実施しました。その結果、膜チャネルにより細胞死を効率的に誘導するための細胞内CAの設計指針を確立することに成功しました(図4)。

図1~4

これらの成果物である細胞内CAを研究開発項目4・5・6に提供することで、検査・除去という機能付与を行った細胞の機能評価実験に着手しました。

3. 今後の展開

培養環境において、評価用の株化免疫細胞または、ヒト・マウス血液から回収した免疫細胞に対して、設計された細胞間コミュニケーションをもちいて、専門家の意思の反映が行われるように細胞内CAを複数構築し、他の研究開発項目と共同でその機能性の評価を行います。
加えて、CA搭載細胞の安心・安全な利用のため、構築した複数の異なる原理による強制停止用の細胞内CAの組み合わせ、その「強制停止」機能の評価を行います。強制停止用細胞内CAについては、副作用の評価を行います。