低炭素社会の実現に向けた技術および経済・社会の定量的シナリオに基づくイノベーション政策立案のための提案書

LCS-FY2019-PP-21

ゼロカーボン電源システムの安定化と技術・経済性評価(Vol.1)
—安定的かつ経済的なゼロカーボン電力供給のための技術開発課題—

  • SDGs7
  • SDGs11
  • SDGs12
  • SDGs13
  • SDGs1
  • SDGs09

概要

 脱炭素社会の実現に向けて、電源起源のCO2排出量をゼロとする電源システム(ゼロカーボン電源システム)を構築するための技術的・経済的評価が求められている。

 本提案書では、低炭素社会戦略センター(LCS)の構築してきた低炭素技術の定量的技術シナリオに基づく系統安定性を考慮した電源構成モデルを用いて、2050年のゼロカーボン電源システムを多角的に評価した。ゼロカーボン電源システムの構築に必要な技術指標とその経済性を示し、技術開発の方向性を示すことを目的としている。特に電力需要、慣性力供給技術、再生可能エネルギーポテンシャルに着目し、その経済性を評価した。省エネルギー、電力化率の上昇、IT関連の電力需要の増大などにより、将来の電力需要は不確実性が高い。電力需要800~3,000 TWh/年を分析対象とし、技術向上による太陽光発電ポテンシャルの拡大、浮体式を含む洋上風力発電の導入、送電網の大規模強化を考慮した。系統安定度の指標として地域内の同期発電機により供給される慣性力比率を50%、25%、10%と定め、その経済影響を評価した。系統安定化に寄与する技術として、多目的ダムを活用した新揚水発電、高温岩体地熱発電(HDR)の導入による影響を評価した。その結果、再生可能エネルギーおよび蓄電システムのコスト低減、送電網の強化に加え、再生可能エネルギーポテンシャルの拡大によって、ゼロカーボン電源システムの構築は経済性を加味しても実現可能であることを示した。特に、慣性力供給技術による経済影響が大きく、系統安定化のための技術開発の重要性を明らかにした。技術開発による効果は、再生可能エネルギー電源システムのコスト低減およびポテンシャル拡大の技術開発により、1~10兆円/年の電源コスト低減効果があり、系統安定度技術の向上により、1~20兆円/年の電源コスト低減効果があることが示された。以上をふまえて、本提案書では、再生可能エネルギーのコスト低減技術とポテンシャル拡大のための技術開発と産業育成、慣性力供給技術を含む系統安定化対策技術の推進を提案する。また、ゼロカーボン電源システムを前提とした大規模送電計画、広域の系統安定化のための技術・経済評価手法の構築を提案する。

提案書全文

関連提案書