低炭素社会の実現に向けた技術および経済・社会の定量的シナリオに基づくイノベーション政策立案のための提案書

LCS-FY2019-PP-03

日本における蓄電池システムとしての揚水発電のポテンシャルとコスト(Vol.2)

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概要

 世界では太陽光発電や風力発電などの変動する再生可能エネルギー(VRE)の年間発電量に対する割合が20%を超える国が増えてきているが、日本では、まだ6%程度にすぎない。しかし、今後日本でも再生可能エネルギーの大幅な導入に伴い、VREの比率も高まることから、電力系統の安定化のための対策が必要になる。系統安定化には電力貯蔵は有力な対策とされており、特に揚水発電は貯蔵の規模、応答速度、慣性力のある電源であることや、現時点のコストなどの観点で優位である。

 2018年度提案書では低炭素社会戦略センター(LCS)は、全国に分散している約2,700の多目的ダムのうち、揚水発電に適したダムを下池として使用することにより、多くの分散した揚水発電所がコストを削減して建設できることを示した。本提案書では、全都道府県について開発可能な揚水発電の蓄電設備容量と、分布状況を調べた。さらに、このような揚水発電を新揚水発電と呼び、発電設備、ダムの水量の利用条件等を種々変えた時の蓄電設備容量とコストについて計算した。
 その結果、条件により設備コストは39.5円/Wh ~ 44.5円/Wh、発電コストは19.4円/kWh ~ 20.4円/kWhとなった。これは、2018年度提案書で計算したコストの約15%減であるが、運転条件の工夫によりさらにコストダウンの余地がある。また、全国の蓄電設備容量の合計は747 GWh/回(5h)/日~2,170 GWh/回(5h)/日が期待できた。この結果はLCSが示した2050年の低炭素電源システム(電源起源のCO2排出量現状比80~85%減)に必要とされる蓄電池容量(360~510 GWh/回)以上であり新揚水発電の蓄電設備容量が十分にあることを示した。
 新揚水発電は将来有望な蓄電システムであり、今後、普及の状況や地域特性、コストや蓄電量の関係を考慮しつつ設置を検討し、適切に設備を検討し、運用計画を立案していくことが必要である。

提案書全文

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