低炭素社会の実現に向けた技術および経済・社会の定量的シナリオに基づくイノベーション政策立案のための提案書

LCS-FY2019-PP-20

風力発電システム(Vol.2)
—大規模導入を想定した将来の日本型風力発電システムの経済性評価及び技術開発課題—

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概要

 世界の風力発電が拡大する一方、日本では停滞傾向にある。現状の規制による弊害や事業者への支援不足から市場規模は小さく、日本の風車の導入費用は世界平均より1.5~2倍程度高い。脱炭素電源システムの構築に向けて、変動性対策や系統強化の費用も考慮すると、さらなる風力発電システムのコスト低減が必要である。日本では海外と比較して、日本特有の気象条件による導入課題が多いため、日本型風車の開発の試みが様々なされている。

 本提案書では、日本の課題と技術対策課題を整理し、大型風車の主流である3枚翼水平軸風車を対象に、風力発電システムの現状および将来発電コストを推計した。特に洋上風車について、基準ケースおよび、定格出力比が小さくロータ径を大きくすることにより風速7m/s、7.6m/sで設備容量50%となる高設備利用率型洋上風車の経済性を評価した。その結果、大規模導入を想定した洋上風力発電システムについて、基準ケースにおける着床式、浮体式の発電コストはそれぞれ、12円/kWh、14円/kWhであった。また、高設備利用率型洋上風車においては、着床式、浮体式の発電コストはそれぞれ12円/kWh、13.6円/kWhであった。基準ケースに対して高設備利用率型洋上風車の建設コストは2倍程度となるが、発電コストが同等であることが示された。設備利用率が上がると送電費用も抑えることができる。LCSの計算では脱炭素電源システムのコストは12~22円/kWhであり、電力需要が増大した場合には洋上風力発電システムの導入価値がある。電力消費地からの距離、発電特性など運用方法とともに産業育成も含めた導入戦略を評価する必要がある。以上の課題を考慮し、系統全体のコストが評価されるような産業支援、コスト低減のための大規模な国内導入を想定した課題評価の必要性を提言する。

提案書全文

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