[革新光] 独創的原理に基づく革新的光科学技術の創成

戦略目標

「最先端光科学技術を駆使した革新的基盤技術の創成」

研究総括

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河田 聡(大阪大学 名誉教授)

概要

 光科学技術は、これまでの力強い研究ならびに開発によって、産業・学術の両面においてその発展に大きく貢献し、またそれ自身も大きく発展してきました。本研究領域ではこれをさらに進めて、光の有する本質的な特性を使いつつ従来にない独創的な発想に基づく革新的な原理による光科学技術の創出を目指します。また将来あるべき姿やゴールを見定めることによって、バックキャスト的な視点を取り入れながら他の科学・技術分野との相互作用によって、全く新しい光応用分野領域の創成を図ります。
 具体的には、既存の原理や技術と異なる新しい発想に基づく光デバイス・装置や計測・分析法、ナノ加工の提案と実証、生命体の理解や医療システムおける新しい原理と技術の開拓、数理科学に基づく光情報処理システムへの展開、さらには、光による環境モニタリングと環境制御・保全の創出、食の安全の確保などを例とし、持続可能な社会を実現するための解決すべき大きな課題、豊かな社会を支えるための産業上の大きな課題、あるいは未来を切り開く知を得るための大きな課題、これらの課題解決に向けて突破口を開き具体的な貢献を果たすための契機となる具体的でチャレンジングな光科学技術の研究や開発を対象とします。

 本研究領域は、文部科学省の選定した戦略目標「最先端光科学技術を駆使した革新的基盤技術の創成」のもとに、2019年度に発足しました。

領域アドバイザー

石川 正俊 東京大学 大学院情報処理工学系研究科 教授
石原 美弥 防衛医科大学校 医用工学講座 教授
井上 康志 大阪大学 大学院生命機能研究科 教授
笹木 敬司 北海道大学 電子科学研究所 教授
為近 恵美 横浜国立大学 成長戦略研究センター 教授
中野 義昭 東京大学 大学院工学系研究科 教授
羽根 一博 東北大学 大学院工学研究科 教授
不二門 尚 大阪大学 大学院生命機能研究科 特任教授
吉川 研一 同志社大学 生命医科学部 客員教授
渡邊 裕幸 富士フイルム(株) フェロー

2019年度募集・選考・領域運営にあたっての研究総括の方針

1.基本的な考え方

 本研究領域の主眼とする戦略目標を達成するため、将来あるべき社会やサイエンスの姿を明確に定義し、従来技術に頼らない独創的な発想に基づくチャレンジングな光科学分野の研究提案を求めます。将来あるべき社会像としては例えば、新物性・反応・機能の探索・創出を通じた新しい機能性デバイスの創出により実現される新しいライフスタイルと省エネルギー社会、生命現象の本質的な理解と革新的な治療技術創出によって実現される健康長寿社会、最先端光科学技術を駆使した新しいデバイス・装置・サービスによる高速情報処理技術の創出に基づいた全ての人が豊かで安心して暮らせる超スマート社会などが考えられます。また、国連サミットで定められた持続可能な開発目標(SDGs)の達成への貢献も光科学技術の果たす役割であると考えます。これらの研究を通じて、次代を支える光科学ならびに関連する科学分野の技術基盤の創成を目指します。
 なお本領域では、物事の「解明」の段階に留まることなく、課題解決のための「発明」にまで進めるといった本当の意味での独創性を追求します。また、単なる「応用」という目標を超えた「市場」を創出するという心意気で、研究推進を図ります。

2.想定する研究分野

 具体的には、以下に示す研究を対象例として挙げますが、これらに限るものではありません。
(1)既存原理・技術と異なる発想に基づく光計測法、ナノ加工法、光材料・光デバイスの提案と実証
 これまでの光デバイスの研究は、リソグラフィー技術をはじめ様々な半導体製造技術の発展に依存して高度化が進められて来ましたが、すでに知られた基本原理に基づくもので、その発展が飽和してきています。また、計測分野においても、AFMやフェムト秒レーザー、ポンププローブ法などの既存の装置・技術に依存したものとなっており、世界的にも類似の研究が幅を利かせている状況です。
これらを打ち破り、光科学技術の革新を図るための基本概念の創出と、これを実証して発明につなげる研究提案を求めます。
ア 自己組織化、自己成長、カオス・複雑系などの非線形数理科学に基づいた新概念のレーザー、光学材料、光検出器等の光デバイスの研究
イ 確率論・確率過程論などサイバネティックスなどに基づく光検出、光制御など
ウ FTIRに代表される既存手法に代わる新たな赤外・ラマン分光ほか、革新的概念に基づいた顕微鏡や分析法などの提案と開拓
エ プラズモニクス材料、メタマテリアルにおける本質的な原理開拓と実用化を視野に入れた応用、大面積や3次元などこれまでの限界を超える製造法の開拓

(2)光特性を活かした生命の観察・治療技術の創出
 生命科学とは、「生死を扱う科学」と考えます。この分野では、がん治療、脳科学、恒常性に関する研究や開発など、多くの研究投資によって優れた成果が得られていますが、本研究領域では重要な課題であるにもかかわらず、これまで十分な研究投資がなされていない分野からの積極的な応募を期待します。これらの分野ではすでに光の有用性は十分に認識されていますが、特に生きたままの状態での生命体のダイナミクスを観察・分析・制御することにより、光の適用範囲を拡大し、生命科学や医療の飛躍的発展を可能とするような研究開発の提案を期待します。
ア 発生学、新陳代謝などに関する非線形数理科学および確率・確率過程を基礎としたフォトニクス研究
イ 数理生物学や治療、創薬(薬剤開発と治験)へのフォトニクス研究の展開
ウ 複数種類の分子の挙動を同時に識別可能な新規イメージング技術の開発
エ 広い視野で分子レベルの同時計測が可能な顕微鏡技術の開発
オ 光駆動のコヒーレント音響波など、光技術の利用による生体深部の臨床検査や非侵襲治療を可能とする基盤技術の開発
カ 眼科(眼内レンズ、眼内レーザー手術、眼底検査)や外科の腹腔手術、皮膚科などでのレーザー手術における革新的基盤技術の開発

(3)数理科学・情報処理の光への利用/光の情報処理への利用
 情報処理の分野では、光のアナログ性や並進性を活用した情報処理システムの開発がなされてきました。また画像解析にビッグデータの利用がなされていますが、光ならではの特長を活かす意味を含め、学術的な立場での進展があまり見られないように思われます。その状況を一変させる研究開発提案を期待します。
ア 自己組織化、自己成長、カオス・複雑系などの非線形数理科学および(あるいは)確率論、確率過程論などサイバネティックスを基礎とした研究
イ 情報処理を能動的に組み込んだ革新的な光センシング、イメージングシステム技術の開発

(4)社会課題の解決に向けた光の利用と光要素技術の開発
 これまで光科学技術の研究開発は通信等の産業界とうまく連携しながら発展し、高度なデバイスとして実現されてきました。しかしながら、世界的には環境、生態系、食料、水、伝染病のようなテーマの解決がより重要で、それらの問題を解決するための新しい産業も育っています。
ア 「環境問題」「食糧問題」「水問題」などの社会課題の解決を図るための光技術の開発
イ 爆発物や毒薬の検出など、人と国の安全と命を守ることに繋がる光技術の開発
ウ 上記を可能とする光源・検出器・分光装置等の開発

3.研究実施に係る体制や規模について

(1)チーム構成及び研究費について
 提案課題の目標達成に応じたチーム構成とし、予算規模は下記の二段階とする。
ア 予算規模I:4~5億円程度(採択予定:1~2課題)
イ 予算規模II:1.5~3億円程度(採択予定:3~4課題)

(2)提案者について
ア 多様な研究者からの革新的な研究提案を求めます。短期的な成果ばかりを追わず、研究期間全体を通して、独創的かつ挑戦的な成果の創出を目指した研究提案であることを期待します。
イ 若手からの積極的な応募を期待します。

4.運営方針

(1)研究のアウトプットについて
 本研究領域では、チャレンジによる原理開拓と革新的な技術の創成を求めますが、採択者にはそれが論文としての成果に止まらず、終了時点においては「他には無い」モノの創出を狙ってもらいたいと考えます。具体的には、基本的な考えで述べたとおり、物事の「解明」の段階に留まることなく、それよりも一歩進んだ「発明」にまで進めるといった本当の意味での独創性を追求します。また、単なる「応用」という目標を超えた「市場」を創出するという心意気で、研究推進を図ります。
(2)研究交流について
 採択されたチームは、本研究領域の他のチームとの積極的な交流や連携を期待します。これにより、分野を異にする科学技術の間からの新しい芽の創出とその展開を図ります。また、2015年度に開始したCREST「次世代フォトニクス」、さきがけ「光極限」を始めとするJST内の関連する研究領域はもちろん、国内外の主要な研究者との共同研究を含めた交流や連携を推進することによって、より多くの興味深くかつ意義深い研究構想が、本研究領域で取り組まれるようにしたいと考えています。
(3)若手人材育成について
 各研究チームに属する若手人材には、採択された課題のみでなく分野を異にする研究に触れるチャンスを作り、その中からも新しい研究課題の創出や、人材の育成を図ります。

プログラム

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