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- 吉村パイ電子物質プロジェクト
総括責任者 吉村 進
(松下技研(株) 専務取締役/新素材研究所長)
研究期間:1991年10月~1996年9月
私たちは、古来人類の友であった炭素材料を新素材として蘇らせようとの思いで、固体中にπ電子の広がりが存在するために起こる諸現象を基礎的に解明し、新機能を生み出す研究を進めてきました。
この研究により、グラファイトを代表とする種々の新パイ電子物質が極めて低い温度で合成され、パイ電子空間での規則的な重合反応あるいは生体細胞の活性化などが観察されました。また、パイ電子物質と金属・半導体・金属酸化物・ガラス・高分子・生体細胞など多くの物質との相互作用を制御することにより、新機能の発現、パイ電子デバイスの提案が可能になりました。
近い将来に、ここで得られた低温合成炭素材料に基づく電子デバイス、たとえば、高容量2次電池、太陽電池、発光素子、ディスプレイデバイスなどの実現が可能になるものと思われます。
金属触媒上に、有機化合物を化学気相堆積法で沈殿させ、500から1000℃の低温で、高い配向性を有するグラファイト薄膜および金属含有カーボンナノチューブを合成した。
グラファイト及びカーボンナノチューブにアルカリ金属、金属塩化物、金属酸化物を高密度で挿入した新規層間化合物を合成し、万有伝導度ゆらぎなどの量子効果を発見した。
5員環を含む有機化合物を重合・炭素化することにより、3.9A以上の面間距離を持つ炭素を合成し、エネルギー蓄積用ホスト材料としての可能性を見い出した。
n-Si上に炭素薄膜を堆積させた接合素子は、理想的なショットキー障壁接合特性を示し、太陽電池としての変換効率が6%以上の高効率に達することを示した。
グラファイト表面のパイ電子空間での重合反応の汎用性を確立し、特異な2次元反応および反応のフラクタル性を見い出し、構造制御された機能性高分子の合成への道を開いた。
ゾルゲル法を用い、芳香族有機化合物の存在下で調整したシリカガラスにおいて、超分散した炭化中間体に起因する強い発光現象(400~600nm)を初めて発見した。
▲化学気相堆積法で基板上に作成した高配向グラファイト薄膜とそのX-線回析
▲グラファイト表面にエピタキシャル配列したポリジメチルシロキサンの走査トンネル顕微鏡像