横山液晶微界面プロジェクト

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総括責任者 横山 浩
(産業技術総合研究所 ナノテクノロジー研究部門長)
研究期間:1999年10月~2004年9月

 

「液晶のナノテクノロジー」を目指して、ナノスケールの界面環境と液晶の自己組織性との協奏が生み出す、分子集団の多様な高次構造の世界を開拓し、その形成機構の解明と人為的制御による新規な機能の発現に取り組みました。探索的実験と理論・シミュレーションの連携を横軸に、そして微細加工・分析(トップダウン)と合成・統合(ボトムアップ)からのアプローチの連携を縦軸にした分野横断的な研究開発によって、これまでに例のない「三安定液晶デバイス」の実現から、光や電場で構造が大幅に制御でき、フォトニックデバイスに応用が期待される液晶コロイド(液晶を媒質とした微粒子分散系)の学理の発展、液晶の集団秩序を生かした分子モーターの実現、さらに微界面コンセプトに基づく分子設計による新規なナノ構造液晶相の発見と分子論の展開など、科学と技術にわたるナノ構造液晶の将来性を明示する、多くの先導的な成果を挙げることができました。ナノ構造液晶に関するこれらの成果は、電気光学デバイスの枠を超えて、生命現象の分子的理解とその利用にも新たな展開をもたらすものと期待されます。

成果

液晶と粒子からなる規則的安定配列の構築と理論・シミュレーションの展開

一様な液晶に粒子を導入すると何が起こるか? トポロジカルな配向欠陥を持つ2粒子の規則的安定配列の構築に成功し、光ピンセットを用いて2粒子間に働く力の異方性を実験的に初めて検証した。数値計算の困難性をアダプティブメッシュの手法を用いて克服した。実験と理論の両面での成果は、今後、多粒子による複雑構造への発展が期待できる。

 液晶分子モーターの発見

カイラル液晶分子で構成された単分子膜液晶が、水の移動で駆動されて集団回転する現象を発見した。水分子の移動方向で正逆回転し、回転エネルギーが液晶分子の歪みエネルギーとして蓄積され、その後、解放されることなど、今までの分子モーターに無い特徴を持つている。今後、機能性生体膜の作成などへの展開が見込まれる。

 液晶単分子膜における光誘起進行波の理論的解明に成功

光異性化反応により2つの状態をとり得る液晶単分子膜に直線偏光を照射すると、液晶分子の配向に関する進行波が形成される。この現象を取り扱う理論として、液晶配向場の自発的な歪みの効果と光異性化反応の異方性を考慮した連続体モデルを考案し、永らく解明できなかった現象を数値シミュレーションで再現することに初めて成功した。

 フォトニック液晶の自発的形成に成功

カイラル液晶分子のモノマーとツインの混合系が、可視光波長域で特定の色を示すことを発見した。
ミクロなスケールでは層状構造が存在し、マクロスケールでは等方性を示す。X線回折解析、粘弾性測定、TEM観察などから、この混合系は3次元フォトニック構造を、層状構造とカイラリティ由来のらせん構造との競合によって自発的に形成していることがわかった。

 三安定性液晶デバイスの原理発見と動作確認

液晶デバイスを構成する下部基板上に塗布された高分子膜表面に、原子間力顕微鏡(AFM)の探針を用いてナノスケールで配向パターンを形成、表面の対称性を高めることにより、ネマチック液晶の一軸対称性に抗して配向の多重安定状態(1つの条件で、複数の安定な状態をとりうる性質)を作り出し、三安定メモリー性を発現させることに初めて成功した。

 液晶コロイドの自己組織化と光制御に成功

液晶に微粒子を分散した複合系(液晶コロイド)では、液晶の分子配向を介して粒子間に強い力が働き、特定の手順を経ることで,微粒子が規則的に配列したコロイド結晶が自己組織化されることを見出した。さらに、光応答性色素を加えることで、コロイド結晶の凝集状態を光照射で大幅に制御することにも成功した。

研究成果

評価・追跡調査

プログラム

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