鳥居食情報調節プロジェクト

総括責任者 鳥居 邦夫
(味の素(株) 中央研究所 主席研究員)
研究期間:1990年10月~1995年9月

 

生命現象の中の脳による生体恒常性維持機構について、液性、神経性両面より明らかにすべく、無麻酔無拘束条件下で研究を実施しました。研究では、生体が欲求する栄養素を量的質的に評価するエペラント行動観察装置を開発し、脳内の欠乏栄養素認知部位の測定にあたってはin vivo用のMRI装置を立ち上げました。これらの機器を駆使して、特定栄養素欠乏動物や代謝性疾患モデル動物が特定栄養素を選択摂取し生体恒常性を維持することを観察し、欠乏栄養素の脳内での認知部位を世界で初めてMR画像として捉えました。また、栄養素欠乏に対して適応する際に脳に可塑的変化が生じること、適応に神経栄養因子であるアクチビンが深く関与していることを明らかにしました。
これらの結果は代謝性疾患での栄養療法により生体恒常性のリハビリテーションの可能性を示していると考えます。

成果

オペラント型行動観察装置の開発

欠乏栄養素の要求性を数量化する方法を開発した。この装置を用いて、特定栄養素欠乏動物、代謝性疾患モデル動物の嗜好性を観察した。

MRIを用いた脳、肝機能の測定および画像化

MRI装置とを用いて酸素消費量、血流量を指標に脳、肝機能の画像化に成功。この手法を疾患の診断に応用できることを確認した。

病態モデルラットの作成

ガラクトサミン誘発肝炎モデルおよびストレプトゾトシン、サイプロヘプタジン誘発糖尿病モデル動物を作成した。

無麻酔下での単一ニューロンの応答の記録

無麻酔下で微小ガラス電極を脳内に留置し、単一ニューロンの応答を記録した。栄養素欠乏に適応できるよう可塑性が発現していることを確認した。

アクチビンの中和抗体作成

通常の方法では抗体作成が困難であるアクチビンの中和抗体をニワトリの卵より作成する方法を開発。中和抗体としての活性を確認した。

生体恒常性維持機構は脳での可塑性によることを発見

必須アミノ酸欠乏ラットが欠乏栄養素を定量的に選択摂取する機構は、視床下部を中心とした脳の可塑性の発現により生じ、神経栄養因子であるアクチビンが明かとなった。

fig1

▲特定栄養素摂取時の脳での神経応答を調べる

fig2

▲リジン欠乏ラットの脳各部位での酸素消費におけるリジン投与の経時的変化

研究成果

プログラム

  • CREST
  • さきがけ
  • ACT-I
  • ERATO
  • ACT-X
  • ACCEL
  • ALCA
  • RISTEX
  • AIPネットワークラボ
  • JSTプロジェクトDB
  • 終了事業アーカイブズ
  • ご意見・ご要望