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総括責任者 外村 彰
((株)日立製作所 基礎研究所 主管研究長)
研究期間:1989年10月~1994年9月
電子は、小さな領域を観察する有力な手段です。本プロジェクトでは、電子の持つ波の性質を利用して物質の構造や性質を計測する技術、いわゆる電子干渉計測を、より高度な汎用性の高いものに発展させるとともに、それを様々な物質の計波に応用する研究を進めました。
その結果、液晶パネルを用いたリアルタイムホログラフィ、200分の1波長以下の位相変化を検出できる位相シフト干渉法、電磁場の三次元分布計測法など、いくつかの新しい干渉計測技術を確立しました。また、これらの技術を用いて、磁区・磁壁の変化の動的な観察、生体物質の無染色正焦点観察、空間磁場の三次元計測、収差補正による分解能の向上などの応用計測を実現しました。
こうした基礎、応用にわたる研究により、電子干渉計測に新たな展開をもたらすことができました。
液晶パネルを用いて、電子顕微鏡とレーザー光学系を結合し、磁性体内の磁区や磁壁の変化等の動的な現象を一画像当り 1/30 秒(TV レート)の高速でホログラフィ観察する手法を開発した。
物体を少しずつ回転させながらその都度干渉図形を記録し、それぞれの位相分布から物体の三次元形状や電磁場の三次元分布を計測する技術を確立した。
収束電子線を用いたホログラフィ、結晶薄膜を用いた振幅分割型ホログラフィ、インライン・ホログラフィなど、新手法の開発や、従来技術の改良により汎用性を向上させた。
物体を透過した電子波と基準電子波の位相差を変化させながら記録した複数枚の干渉図形から、透過電子波の位相分布を 1/200 波長以下の精度で計測する技術を確立した。
電子線による干渉図形を計算機に取り込み、電子レンズの収差によって生じたボケを数学的に補正することによって、元の電子顕微鏡を超える分解能を達成した。
数 GHz で動作可能な電子線検出器と電子相関計数装置を開発し、可干渉電子波の強度揺らぎなどを計測した。これにより。超高速で電子を計数する基礎技術を確立した。
▲電子波位相の計測法(電子線ホログラフィー)
▲磁性体微粒子の観察
▲Real-time observation of magnetic domains in permalloy film